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4b4b5133d66eab7d07900cdaf9775470 - 国のバランスシート IMF衝撃レポートの謎解明!債務超過 無しは本当?

政治・経済政策

国のバランスシート IMF衝撃レポートの謎解明!債務超過 無しは本当?

更新日:


2019/1/23

はじめに

IMFから2018年10月に以下出展のレポートが出され、日本政府(公的部門)の債務超過額がほとんど0に近いグラフが示され、大きく取り上げられました。

 

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出展:  IMF FISCAL MONITOR Managing Public Wealth October 2018

この図の赤◯の中の黒い●が日本の純資産(資産-負債)ですが、対GDP比2016で限りなく0に近いです。サイトに掲載されているエクセルのグラフの側の源泉データを見ると、対GDP比 -5.8%です。

この件についてIMF,内閣府、それから地元の市のバランスシート作成担当の方及びこの件について記事を書いたロイターの記者にヒアリングして記事を書きました。

財務省の国の連結財務諸表によるものは、2018年のもので、債務超過額が483兆円程度になっていたのを筆者は知っていましたので、これを見て大変驚きました。

 

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出展:  財務省 平成28年度連結財務書類の概要

また、このデータを見た識者の記事や、その記事を見た人から、「日本は借金問題ほとんどないことのお墨付きがあった。政府の財政問題ないので、財政出動もっとしても良い」との意見も多く見るようになりました。

またそれから後に2019年1月の米国の記事を見ると、日本もGDPに対して多く借金をしているので、米国も、もっと借金しても良いとの記事も見ました。

「本当か?」と思いました。

「日本のことをあまり知らなさそうなIMFが日本のデータをきちんと捉えているのか」

 

借金の問題は、その経済システムが維持可能か、健全か、に関係してきています。少なくとも、日本では「金利がなくなっている」状態で、国の財政を悪化させないためには、永遠に低金利でなければいけません。

1970-80年代に定額貯金の金利が8%-12%あった時代と比べると、預金者は不都合を永遠に強いられることになり、世界各国と相対的に比べると健全ではありません。「金利収入を得る」機会が永遠に失われた特異な国になっております。

 

その問題を考え、国の中で共有するためには、バランスシート(Balance Sheet: B/S)や損益計算書(Profit & Loss Statement:P/L)に該当する書類を各項目精査し関連を調べることが必要です。

 

債務超過でないか否か以外に、本質的な問題としては、「政府の財政は債務比率は少ないので、財政出動を積極的にして良いか」について検討し、合わせて、現状のB/S作成の問題点も指摘してみます。

日本国を憂い、「財政出動派」と、また逆な「財政規律派」の2つの人々がいると思いますが、お役に立てれば幸いです。

 

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結論

  1. 日本国政府と地方自治体(都道府県、市町村)含めた統合的なバランスシートでは、地方自治体の土地・建物、設備等が資産として追加されているため、債務超過ではありません。
  2. 地方政府は、例として千葉県、千葉の各市を見てもわかるように、債務超過してなく、正味資産があります。この分は、財務省の連結財務諸表には入ってないです。全国の地方自治体の正味資産が内閣府のバランスシートには足されるので、資産が大幅に増加となります。(非金融資産で700兆円程度)
  3. 日本国政府と地方自治体の統合的なバランスシートでは、債務超過をしてないが、公共サービスに使用する売却が困難な資産があり、実質換金できにくいため、積極的に財政出動して良いことにはならないです。よってIMFのデータを見て、もっと財政出動しても大丈夫というのは正しくありません。

IMFレポートを読むと、資産があるからといって財政支出しても良いわけでなく負債に着目するのは重要だと述べています。

 

3について、たとえば、ある市で、売却可能な土地を試算したら、全土地のうち、0.3%程度だったと評価があります。よって換金ほとんどできません。もちろん、この例は極端な可能性も有り、地域によってはもっと売却できるものはあると思います。

他の例では、高いお金をかけて、道路に200mのトンネルを作って資産計上したとします。このトンネルって買う人まずいないですよね?

売却可能な資産の全国的なデータはありませんので具体的な数値での評価は困難です。

逆に、それを行えば評価はできますが、かなり大掛かりな作業ですし、「買う人いるのか」という、流動性の問題もあります。流動性がなく、売れない限り、換金できません。

買う人いなく、処分に費用がかかるのなら負債的扱いにもなります。

また、B/Sの考え方では、その中に売れる固定資産を識別するようになっていないので、そこまでの評価はできません。するとすれば、別のアプローチが必要です。

B/S, P/L、それから現金化できる資産の評価を3本セットでしないと実態はわかりません。

 

 

IMFが利用したデータ

ISO9001のプロセスの考え方に従って検証です。この標準は、組織がちきんとした仕事をしているか否かのガイドラインをまとめているものです。プロセスの前に入力しているデータが正しいかを確認します。(入力データ -> プロセス ->結論)

いくら検討プロセスが良くても入力データがきちんとしたものを使用してそして間違いがあるかもしれない前提で確認をしてないと、結論はきちんと出ません。

IMFによると、IMFが入力した「源泉データ」の主なものは以下です。

1) 内閣府 2016年度国民経済計算

2)日銀 資金循環統計

2)の資金循環統計は、お金の流れを見る方は、参照することも多いと思いますが、1)の内閣府のデータに公共部門のバランスシートが実は入っていることはご存知ない方が多いのではないでしょうか?

財務省が作成の国の連結財務諸表あ以外に実は、日本には、もうひとつ公的なバランスシートがあり、それが1)の内閣府が作成したものです。GDPを集計している組織です。

1)の資料に基づき、きほどのIMFの-5.8%とあっているか検証します。

この中でStockのII.3の一般政府(Excel形式:76KB)をクリックするとエクセルファイルがダウンロードできます。
正味資産が約17.7兆円でプラスになってます。これはおかしいですね。

 

そのまま内閣府のデータを利用した訳ではないようです。2016年Calendar Yearの名目GDPは、内閣府のデータでは、約537兆円となっています。

よって17.7/537=3.3%

このような大きなレベルのデータがずれていると中身の詳細データもおかしいことが多いです。
IMFのデータをエクセルでよく見ても参考にしたGDPデータは入ってないし、計算式も載っていません。よってこの箇所は検証不可能です。

 

IMFが参照したであろう、英語版のものを次に確認していきます。

Annual Report on National Accounts of 2018

このデータですが、2016年に発行しています。クリックすると、タイトルに(2008SNA, benchmark year = 2011)と補足があります。SNAという標準についてはあとでご説明いたします。

ここの、Stockの箇所のII.3. General Governmentの箇所を見ます。そうすると、先程のブログで見たのと同じ数値のものがエクセルで見ることができます。やはり数値は一緒です。

なお、少し気になる話ですが、以下のように2018年に計算の基準を改定して計算しなおしている模様です。

2008SNAに対応した我が国国民経済計算について(平成23年基準版)(平成28年11月30日)【全体印刷用】(PDF形式:1.1MB)

よって、IMFが使用したデータが、内閣府のサイトに載っているデータか否かはわかりません。また、内閣府に載っていたデータに変更があったのか否かもわかりません。改定は年に一度の模様です。

ただ、オーダ的には、2倍や10倍ずれている訳ではありません。

少しデータ管理の課題を指摘すると、

  • IMFが使用するデータや、内閣府が使用するデータ、文書は各々に、文書番号と作成年月日と改定符号を明らかにする。
  • 文書毎、すなわちPDFやエクセル毎に、変更履歴を管理する。
  • 文書一括のコンフィグレーションが整合しているか、改定を一式した時に確認した記録を入れる。

 

これらのことが必要です。そうでないと、国際間や国内のデータの信憑性と正確性、網羅性がわからなくなります。(まさに今わからなくなってます)  改善をIMF/国内とも望みます。

 

IMFは財務省でなく、なぜこのデータを利用したのか

通常、「国 バランスシート」などのキーワードで検索すると、財務省の財務諸表が出てきますので、恐らく、財務省のバランスシートを見る方が多いでしょう。

よって、内閣府発行のバランスシートを見る人や認識している人はほとんどいないのではないでしょうか?

私も今回、この件を調べて始めて知りました。

財務省のものは、英語版は見当たりませんが、内閣府のものは、英語版のものが国際基準に従って作成されています。

IMFがなぜ財務省のバランスシートを使わないかというと、財務省のものは、国連の標準の2008SNAに準拠してないからです。また英語版もないためです。ただし、IMFは、参照にはしている模様です。

財務省がなぜSNAに準拠してないかは不明です。

 

このSNAは、System of National Accountsの略称であり、「国民経済計算」または、「国民経済計算体系」と呼び、国連が各加盟国に導入を勧告したものです。内閣府のデータや日銀のデータは、2008年版標準のSNAである、2008SNAに準拠しています。

IMFは、この標準に基づいて各国からデータを集めています。

ただ、内閣府は、日本版のJSNAというものを作ってデータをまとめているようです。日本が外国の標準を取り込む時に、J****と呼び名をつけることがありますが、内容や解釈が変わっていることがあるかもしれませんのでそのまま厳密に対比できるかは不明です。

たとえば、ISOには、JISOというものはございませんので対比する必要はないですね。

ISOは国際的に標準化されたISOに基づいて日本の組織も対応します。ただ、その標準作りも国通しのパワーゲームのところもあるので、必ずしも日本の実情に合致しないことも同時に考えられます。

よって、財務省は、時々変わる標準に合わせて財務諸表を変更したくないのかもしれません。

 

2つのバランスシートの差異

財務省の作成するバランスシートと、内閣府のものとどこが違うのか非常に気になりますので調べます。以下のブログ記事に比較があります。

財務省と内閣府の政府のバランスシートの違い

 

また、そのバランスシートの違いを説明した財務省の資料があります。

「国民経済計算」と「国の財務諸表」について

 

あまりに多数のデータがあるので、大きなデータのみ源泉データで実際確認してみます。

なお、国(政府)の財務諸表は、連結の財務諸表を使用します。連結の場合は、28年度末(2016年度末)で、約483兆円の債務超過です。(非連結では、約520兆円の債務超過)

 

差を整理すると、

内閣府財務諸表 財務省連結財務諸表
資産 1302兆円 986兆円
負債 1284兆円 1469兆円
正味資産 17.7兆円 ▲483兆円(マイナス)

 

これを見ると、負債はあまり変わらないが、資産がかなり違います。

では、財務省のH28年度(2016年度)連結財務諸表をもう一度示しますが、以下です。

 

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そして、内閣府の2016CYのデータは以下です。(カレンダーイヤーなので、年度(~3/E)とは時期的にはぴったり合致しません)

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ここで赤枠の箇所を見て頂きたいですが、なぜか数値が記載されておりません。記載すると全貌が良く分かるはずですが、記載されてないと、逆に全貌がわかるといけないことがあるのかと想像しましたので、計算式を入れたものを作りました。

以下のものが追加したものです。

 

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黄色の箇所が総資産を計算したものです。検算もしました。また、緑の箇所が正味資産です。

すると、謎が少し解けてきました。
これをみると、金融資産と負債についてのみは、中央政府は785兆円の赤字、地方も181兆円の赤字ですが、社会保険は223兆円の黒字となっています。そこでよく見ると、年金の債務が0になってます。資産にも計上されてないようです。年金についてはあとで述べます。

そして、合計欄をみると、中央や地方、社会保障の欄にも入ってない生産資産が580兆円も計上されています。これはかなり巨大なものです。

また、財務省の説明の「全体として資産超過の地方政府」というのが気になります。

 

さきほどのブログや、財務省の説明とは観点が少し違いますが、1)巨大な生産資産と2)地方政府の範囲、3)年金の取扱い、この3点が疑問ですので、ここに絞ってさらに検討してみます。

 

1) 巨大な生産資産

公的企業で非金融関係のかなり多数のものが以下の資料に記載されております。

国民経済計算における政府諸機関の分類

 

沢山リストされてますが、代表例は以下です。

  • 国立病院、空港周辺整備機構、都市再生機構、
  • 株式会社 NTT、日本たばこ、地下鉄、高速道路、
  • 地方公営企業 各地方の水道、電気、ガス、病院、技術センター

 

ここでの疑問ですが、これらの一般政府以外の公的企業は、合計欄右上の箇所に赤で記載されていますが、資産しか計上されておらず、負債が一切計上されておりません。

これなぜおかしいと気がついたかというと、やはり正味資産が計算されてないことからです。この計算を入れると、中央政府が785兆円の赤字、地方政府が181兆円の赤字で、社会保障が223兆円の黒字で合算すると、562兆円の赤字になるはずとすぐわかってしまいます。

なお、各公的企業毎の個別の資産、負債、正味財産のデータはついてませんので、データの額の正しさなどは検証しようがありませんでした。

ただ、内閣府の用語の定義から見ると、生産資産に含まれそうなものは、以下がありました。

固定資産とは、非金融資産のうち、生産活動の結果として生み出される生産資産に含まれるものであり、財貨・サービスの生産のために、原則として1年を超えて繰り返し使用される資産である。固定資産は、形態別には大きく、(1)住宅、(2)その他の建物・構築物、(3)機械・設備、(4)防衛装備品、(5)育成生物資源、(6)知的財産生産物から成る。
出展: 内閣府

防衛装備品は、現金化するために売れませんね。

そして、念の為、内閣府に確認しましたが、ご丁寧に回答頂けました。snaに基づくと、一般政府のカテゴリは、上記3つのみになるが、出資しているのが国で、保持しているのが地方とか、あるいはこの3つのカテゴリにsnaの定義上分割できないけど、計上するものがあるとのことです。

よって、合計欄にのみ記載しているとのことです。

分割できるものについては、上記の表について分割して記述しているとのことです。

バランスシートのチェックをする上では網羅性が良くわかりませんが、そういうことだそうです。

 

補足: 非生産資産

また、補足ですが、1.(2)の非生産資産に自然資源とありましたが、これは、水道や鉱山かなと思いましたが、土地等で、以下の定義がありました。

非生産資産(自然資源)は、形態別には大きくは、土地、鉱物・エネルギー資源、非育成生物資源からなる。土地は、さらに宅地、耕地、その他の土地から成り、非育成生物資源は、漁場と非育成森林資源(国有林等が含まれる)から成る。

出展:  用語の解説(国民経済計算)

 

参考までに市役所などに電話して、いくつかの市のバランスシートで土地の評価について調べてみました。すると、以下を説明して頂きました。

市のバランスシートは、財務書類という名称に統一されており、総務省の指示で編集しています。土地については、固定資産台帳に登録するか否か話がH21年にあり、対応している自治体とそうでない自治体がある。その時の取得価格等を設定した。毎年時価評価はしていない。

統一的な基準では、道路等土地のうち受贈部分と昭和 59 年 以前取得分を 1 円評価するとありましたが、実際のデータを見ると、市によっては59年以前のものも計上している市もあり、バラバラです。

よって集計上は、必ずしも全国均一ではない模様です。

土地については、ある市の財務諸表をみると、実際に売却可能な比率は0.3%程度と記述がありました。よって、ここにあるものが資産だからといっても売れる訳ではないので、債務超過がないからといって、その分予算を使っても、回収できなく負債が増えます。

 

非金融資産をまとめると、土地、建物、機械・設備、防衛装備品、育成生物資源、知的財産生産物などの模様です。市や県レベルのB/Sを見ると、土地や建物が多く、予算としてそれらを売り払って使うことを期待することはあまりできないです。

もしこれをさらに検討したければ、最寄りの市町村のB/Sを見て、その資産を売ろうとしたら、自分は、債権化されたものを買うか?と自問自答すれば良いかと思います。

自分で買って投資したくないのであれば売れません。

売却はまったく不可能ではない模様ですが、公共サービスがその分できなくなったり制約を受けるとのことです。

 

売却できる額はいくらかはわかりませんが、IMFや内閣府のデータをもとに、「日本は資産があるから財政出動しても大丈夫」という話にそのままなりません。お金にならない、あるいは売却できない公共資産が多いと考えられるため。

 

2) 地方政府の範囲

次に、地方政府の範囲です。

さきほどの資料に基づいて、地方政府の箇所を見ると、以下のものがあります。

岩手県工業技術センター、都立産業技術センター、鳥取県産業技術センター、大阪市立工業研究所、青森件産業技術センター、山口県産業技術センター、北海道総合研究機構、大阪府立産業技術総合研究所、大阪府立環境農林水産総合研究所、京都市産業技術研究所、公立大学法人

また、都道府県のレベルのB/Sや、各市のB/Sが含まれているかですが、内閣府の国民経済計算での定義が以下となってましたので、入ってます。

地方政府には、地方公共団体の普通会計のほか、公営事業会計の一部、地方独立行政法人の一部が含まれる。
出展:  用語の解説(国民経済計算)

 

さらに、日銀のデータを見ると、snaを適用してますが、定義が同様であり、地方政府、つまり都道府県、市町村がすべて入っております。よって整合してます。

市の担当の方にも聞きましたが、市の財務書類は、内閣府でなく、総務省の指示が来るとのことです。データは、一旦、総務省に行く模様です。

 

 

3) 年金の取扱

次に年金の取扱の確認です。現在、日本でもっとも懸案があるもののひとつが年金ではないでしょうか?

財務省のデータによると、年金については、所要の積立金相当額の143兆円(2003年ベース)を負債と認めています。

国民経済計算では、年金は積立方式でなく、賦課方式で、払った額から支払われるということで、債務は無しになってます。よって、家計の資産上もあがってません。

これって、変だと思いませんか? 両方とも。

確かに解釈上はそうなるのかもしれませんが、年金に関する資産や負債の評価はこれではきちんとできないです。

バランスシートとは離れますが、ちょっと、年金について、資産または負債評価してみましょう。

 

資産または負債評価例題

年金から一旦話を離れ、以下のケースを考えてみましょう。

1)年利10%の高金利預金

2)年利1%のローン

期間5年で単利で考えてみましょう。

1)の資産を100万円もっていたら、5年で5*10=50万円のプラスになります。

2)のローンを2000万円もっていたら、5年で、5*20=100万円のマイナスになります。

 

それでは、問題です。

5年間に渡って以下の支払いが必要となる、資産または負債がありました。

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
10.5万 10.7万 11.1万 11.3万 11.5万

これは、資産でしょうか。負債でしょうか。

そして、1)か2)の商品だとすると元本に当たるものはいくらでしょうか?

ロバートキヨサキの「金持ち父さん」を思い出してください。

........................

........................

キャッシュフローをマイナスにするものは、資産でなく、負債ですね。よって2)ですね。

そして、平均11万位のお金の持ち出しと考えると、11*100/1=1100万円です。

よって、1100万円の負債を持ったこととほぼ同様です。

 

「個人の資産運用と違い、会社の固定資産についても金融商品でない場合は、減価償却などでマイナスになるものがある」との声も聞こえます。そのとおりですが、会社では、その固定資産を利用して、製品やソフトウェアを作り、利益を上げて稼いでいるはずです。

よって、会社で当てはめるとROA(Return on Asset)で全体的に測ることとなります。

国の場合は、ROAで計算しても大赤字となっていますので、ここでは限定して上記例で考えます。

実際の現在の金利ですが、プラスとなる資産の場合、通常は、Dicounted Cash Flow法では長期国債の金利を利用して、現在正味価値(Net Present Value)に割引きます。

ここでは借金ですが、貸している側のNPVを想定して計算して、そして借りている側のNPVを求めます。エクセルで計算できます。割引率は、10年国債の表面金利0.4%を使用します。

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NPVは54.4ですので、54.4万円の借金になります。この例では、H30以降は0ですので、借金は払い終わった前提です。それでは、この借金が同じ額で10年続くとして、11年めから借金がなくなるといくらでしょうか?

 

借金額は外挿してみます。

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114.1万円ですね。割引率が0.4%と低いので、大体、H25-H34までを足した額と一致します。

 

年金のNPVの計算

上記の例ですが、これは実は10.5万円でなく、10.5兆円です。これは、年金の毎年の政府からの補填額を示しています。

毎年年金が収入からでは足りなくなるので、国から補填している額です。

よって、年金の補填を10年続けて、H34年度まで行い、H35年度には、年金収入の大幅増加か、支出の大幅削減をして+/-0にしたとしたら、H25年度の出発点で、114.1兆円の負債を持っていることと等価になります。

これが20年後にやっとバランスしたとすれば、ざくっと、250兆円位の負債になります。バランス永遠にしないのなら、その分、どんどんと大きくなります。

つまり、財務省では、負債を100兆程度持ってますが、資産にも同等保有しているので、相殺するとすれば債務は0付近となります。そして、10年でバランスさせると想定すると、プラス約114兆円の負債を足す必要があります。20年でバランスさせてプラス約250兆円の負債を足す必要があります。

バランスさせるのが後になればなるほど、借金額の現在正味価値は大きくなります。

 

内閣府やIMFの、年金負債0というのは、現在正味価値を考えると、とっても成り立ちません。成り立つとすれば、バランスさせていないといけません。

よって、この年金についても、バランスシート上は厳密に現在正味価値で計算すると、上記同様、100兆円以上、悪い方向になります。

 

2008snaとは何か

2008snaという用語が出てきましたが、簡単に補足解説いたします。

内閣府のサイトから簡単に抜粋します。

2008sna原文対比(仮訳)

1.1 「国民経済計算体系」(SNA)は、経済学の諸原理に基礎づけられた厳密
な会計慣行に則って経済活動の測度を作成する方法についての国際的に合意さ
れた一組の標準的勧告である。
その中には、経済のパフォーマンスに関して最もよく言及され
る指標である国内総生産(GDP)のような諸項目を測定するための国際的に合
意された基準が含まれている。

自然資源の中でどれが SNA で資産として扱う自然資源かを決定することに関し
て、所有権基準(the ownership criterion)が重要である。制度単位がそれに実
効的な所有権を行使しているならば、つまり、実際にそれから利益を得ることが
できる立場にあるならば、土地、鉱物鉱床、燃料埋蔵量、未開の森林または他の
植生、および原生動物のような自然資源は、貸借対照表に算入される。(英文:
Natural resources such as land, mineral deposits, fuel reserves, uncultivated forests or other vegetation and wild animals are included in the balance sheets provided that institutional units are exercising effective ownership rights over them, that is, are actually in a position to be able to benefit from them. )

GDPの標準化に一番威力を発揮している様です。資産としては、土地も入ってますが、利益を得ることができるのなら、参入され、されないのなら、入らないとのことです。

どこまで土地を参入して良いか、この記述だけではわかりません。よって、この基準に追加のガイドライン文書がない限り、各国の理解による整理になります。

 

また、2008SNAになる前の93SNAではどうだったのか、その主な違いは、2008snaになると以下が追加されています。

2008SNA について - 内閣府

・兵器システムを資本形成(資産)

・ストックオプション

・官民パートナーシップ(PPP)の固定資産の所有権決定の基準

・一般政府/公的部門/民間部門の分類基準等

 

念ののため、日本のデータで確認してみます。以下のサイトの同様の箇所にデータがありますが、国と地方などを分類した「ストック III付表、

一般政府の部門別資産・負債残高(Excel形式:52KB)

のデータで比較してみます。

そうすると、2014年について、93SNAでは、正味財産は、-13兆円、2008SNAでは、66兆円になってます。かなりの変化ですね。これを見ると変動が大きいですね。

また、2008標準を国際的に調整するとしたら恐らく94年から2006年位まで調整したはずです。もう、25年~13年前のものなので実態にあっているか否か、特にリーマンショックなどのイベントを取り込んでないので、中身を精査してはいませんが、時代遅れになってないかちょっと気になります。

 

追記

このIMFのレポートに関して経済評論家の方の記事を見ると、「中央銀行が買い上げた国債と相殺されている」との意見を見ますが、私の調査では異なります。ご紹介したとおり、地方の多量な純資産が計上されているためです。中央銀行が買い上げた国債は、中央銀行の当座預金の負債になっているので相殺されてないと考えます。

また、IMFレポートをよく読むと、資産があるからといって財政支出しても良いわけでなく負債に着目するのは重要だと、グラフの真下の文書で書いています。以下引用します。

Many assets are illiquid or not marketable and would not be available to meet rollover or deficit financing needs in the short term. Asset valuations are also more volatile than debt and can be highly correlated with the economic cycle—meaning their values can be
at their nadir when financing needs are most pressing. Therefore, the assessments of gross debt, deficits, and financing needs remain important for fiscal policy.

出展:  IMF Fical Monitor 2018 Oct. 18
訳: 多くの資産は流動性がないか市場性がないため、赤字の乗り換えをしたり補填を短期的資金にする目的には利用できない。資産評価は負債よりも変動しやすく、経済サイクルと高い相関関係がある。この価値は資金需要が最も差し迫っているとき、どん底の値となる。したがって、総債務、赤字と必要支出は財政政策にとって依然として重要である。

 

また、このIMFレポートを見ると、全体的なトーンでは、負債だけでなく、資産を評価すると別の良い見方ができる、と記述されてあるので、そこだけ見ると勘違いするかもしれません。それは、天然資源(石油など)を持っている国のことを指すのです。

参考までに別図を引用します。

90c9d4ceada6da45b38eeba4ec76e85a - 国のバランスシート IMF衝撃レポートの謎解明!債務超過 無しは本当?引用: IMF Fiscal Monitor 2018 Oct

赤の箇所を見て頂きたいですが、日本は、天然資源がありません。他国は沢山保有している国が多いです。天然資源のない日本は、このIMFのレポートを読む時にそのことを理解して読む必要があります。

 

まとめ

IMFのレポートで、日本は債務超過でないとの衝撃的なレポートについて、その内容をIMFや、内閣府、それから、そのレポートをもとに記事を書いたロイターの記者に確認をとり、内容を整理しました。

ロイターの記者は、詳細にはIMFの資料を読んでないところもあり、逆に私の方から追加情報が欲しいと言われましたので、たまには逆流させこちらから情報を提供します。

債務超過しているのか、それより本質的な問題として、そのバランスシートにより、これから財政出動をさらに積極的にしても持続可能かについて評価しました。現状は、このバランスシートから積極化する理由はないと考えます。

本当に、国の非金融資産や金融資産を利用するのなら、B/S, P/Lと換金可能な資産の洗い出しが必要となりますし、換算資産の評価だけでなく、P/Lも考慮しなければいけません。

持続可能とはどのレベルか、永遠に低金利のままで良いのか等の疑問もさらにありますが、お役に立てれば幸いです。

PS: 英国のマスコミは、純資産がワースト2位ですので、このIMFのグラフを見てかなりの衝撃を受けているそうです。恐らく日本と同様にグラフだけ見ているためと考えられますが、レポートすべて詳細に読み、自国のデータと照らし合わせないと本質理解しにくいです。

このレポートの責任者による国々の評価の例や質疑応答は、以下の動画で説明されています。

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