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人物

藤井聡太のもう一つの数値目標~棋士レーティングとカルマンフィルタ


藤井聡太四段が雑誌のインタビューで、「タイトルを狙える棋士になりたい」以外の数値目標について言及していました。

それは、棋士レーティングで、今1700前後ですが、+200になりたい、とのことです。

あまり、目標については具体的に述べることがなく、今までも「一局一局を大切にする」、タイトルについても、「タイトルをとる」でなく、「タイトルを狙える棋士」と、謙遜しているのですが、このレーティングについては数値目標となるのでかなり具体的です。

藤井聡太四段の公言目標、レーティングの仕組みと、現在の棋士TOP3のレーティング、1900になるまでの時間、それから関連調査で分かってきた高校進学をするか否かの補足情報、さらに新たなレーティング手法としてカルマンフィルタの利用についてご紹介します。

 

 

藤井聡太四段の公言目標

藤井四段は、謙遜して慎ましく、ビッグマウスの反対で好印象ですが、公言している目標、あるいは目標同等のものにどういうものがあるか調べてみました。

 

  1. 八大タイトルになるということで、七冠を超えたいのはものすごい大きな目標
  2. 実力を高めてタイトルを狙う棋士になりたい
  3. タイトルを目指したいけど、実力がないのに結果を求めてもしょうがないので、まずは実力をつけ自分の力をすべて出し切りたい
  4. 30歳までに将棋会の横綱になる
  5. 目標にする棋士はいません。将棋という伝統文化を意識し、すごく強い棋士になりたいです(プロデビュー時)
  6. もっともっと強くなって名人になりたい(プロデビュー時)
  7. 将棋の名人(小六の時)
  8. 将棋史に名を残す棋士になる(小学校卒業文集)
  9. 名人超えを目指します(小四)
  10. 羽生名人を超えたい(小一)
  11. 棋士レーティングで+200 (1700+200 = 1900)

 

なお、一番目ですが、今までは七大タイトルだったのですが、34年ぶりにタイトルがひとつ増えることが 2017年5月20日に発表になりました。八大タイトルを持っている人はまだいません。

「八大タイトルをとる」

という言い方でなく

「七冠を超えたい」

という謙遜した言い方がまた好感持てますね。

プロ前にはいろいろな目標を言ってますが、3番にあるように、「結果よりも自分の実力をつけることがまず先」といっていることが、自制心がありますね。

5番についてですが、昔は羽生名人にあこがれていましたが、プロになった以上、高みを目指すので、憧れなどを持たないほうがよいとの考え方より、目標となる棋士はいない、といってます。

逆に言えば、

誰でもなし得ない将来の自分

を目標にしているのではと推測します。

9番についてですが、これは本人というよりも、通ってた将棋学校の師匠に、「名人を目標にするのではいけない」との旨のことを言われて、そういったのだと思います。若干誘導的ですが、より高いレベルの目標を持つような助言だったのでしょう。

8番の将棋会に名を残すというのは、もう達成済み

ですね。

この中で一番高い目標は何かというと、やはり1番目でしょう。

 

仕事をするにせよ、人生を過ごすにせよ、目標設定というものが一番最初にあるものです。目標をPDCAで回して改善していく、ということが、藤井四段は自然に出来ている気がします。

 

 

レーティングの仕組み

それでは11番の目標にしている棋士レーティング1900についてですが、まずレーティングの仕組みについて簡単にご紹介します。

また、対戦ごとにこの棋士レーティングの数値を見てきましたが、私なりの解釈も紹介させていただきます。

棋士の強さはイロレーティグという方法で示せます。

このイロレーティングの定義は、

イロレーティング (Elo rating) とは、チェスなどの2人制ゲームにおける実力の測定値(レーティング)の算出法である。「イロ」とはこの算出法を考案した、ハンガリー生まれでアメリカの物理学者であるアルパド・イロ(英語版)に由来する。
出典:「イロレーティング」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2017年1月20日 (金) 16:21  UTC

 

このレーティング方法は、広く使われており、2人制ゲーム以外も含めた他の例として、

  • チェス(国際チェス連盟の公式レーティング)
  • ワールドサッカー
  • テニス
  • ポケモンなどのゲームのランキング

があります。

計算式は、少し複雑です。

 

計算式とともに、私が観測した本データの特徴についての

要点は、

  • 対局毎に、相手のレーティングと勝ち負けで、自分のレーティングが再計算できる。
  • 強さが反映されるまで時間がかかる
  • 相手との相性は考慮にされていない
  • 自分の強さの進化やトレンドも考慮されていない

藤井聡太四段は、現在1700前後ですが、これはまだ実力を反映してはいないと考えます。

なぜなら、2017年度において、自分より点数が上の棋士に対して6勝1敗となっているからです。

このあたりをあとの方で解き明かしていきます。

 

藤井聡太四段は、レーティングにも興味があった模様で、四段になる前から自分のレーティングを確認していたとのことです。
これは一種の自分の成績表ですし、もともと数字を見るのも好きだったのでしょうね。

 

 

現在の棋士TOP3のレーティング

このイロレーティングで棋士を評価したサイトが以下です。レーティングのサイトはいくつかありますが、このサイトがいろいろなデータが一番集約されています。

日に日に更新されています。

棋士ランキング 2017/7/13 現在

 

この中でTOP3のレーティングを見ると、

1 佐藤天彦名人 1884
2 豊島将之八段 1865
3 羽生善治三冠 1860

(2017年7月14日現在)

なんと、

1900を超えている人はいません!

これが分かっている上で、1900を目指すとは.....タイトル獲得とは違い、この値が、棋士の実力を示しているようなので、目指しやすい具体的な目標ですね。

 

1900になるまでの時間

それでは現在の1700から1900になるまで、どのくらいの時間になるか、検討してみます。

まず、レーティングの高い人と対戦して勝ったほうが得られる点数が多いです。

負けると点数も引かれますが、この場合は、レーティング低い人に負けたほうが大きく引かれます。

それは、そうですよね、弱い人に負けたので評価も大きく下がります。

2017年度からみると、増減は以下になってます。7月はまだ月末までの途中なので除外しています。

 

年月 レート 増減
2017年6月 1700 70
2017年5月 1630 35
2017年4月 1595 34

平均では、139/3=46です。

今後は年が進むにつれ、勝ち上がって強い人と対戦することが多くなると想定します。

また、8つのタイトル戦ですが、大まかにいうと、今年度予選から勝ち上がって、来年度タイトル戦というものが多いので、藤井四段の場合は、来年度が山場になると予想しています。

平均値は、46でしたが、今後強い人との対戦が増えると想定し、この値を1.2倍すると55。

200/55=約4ヶ月

よって、

10/Eには、1900になっている可能性

があると予測します。

 

高校進学をするか否かの補足情報

急に高校進学の話になりますが、「唐突な」と思われるかもしれませんが、レーティグ目標の雑誌の中で関連記述があり、気になりましたので補足します。

また、この補足が実は今後のレーティング予測に関係しているので取り上げました。

次の項では新たなるレーティングモデルを考えてみました。

まず雑誌は、週間ダイヤモンドで、囲碁界の若き最強棋士の井山十段との対局棋士です。

井山さんは、今28歳ですが、2016年に史上初の七冠達成をし、囲碁界では、最強といわれる棋士です。

藤井四段の先をすでに実践したような人ですね。

 

この対談は、今なら本屋などで購入できます。

 


なお、以下でも記事のさわりだけ紹介してますが、雑誌の方が長い文章で掲載されているので、良いです。これだけまとまった記事を見たことはないですね。

ダイヤモンドも良い記事を書いています。

藤井聡太が井山裕太に教えを請う、将棋と囲碁の若き天才が初対談

 

この記事の中で井山さんの以下の言及があります。

囲碁界では高校に行かない人が結構いて、大学まで出られる棋士はかなり少ない。だから高校進学せず囲碁に専念するという選択には全く迷いがなかった。せっかく自分の一番好きなことを職業にできて、この時期は今後の棋士生活にとって非常に大事な時期だから、ここは精いっぱい囲碁に専念して悔いのないようにやってみたいという思いが強かったです。
出展: 週間ダイヤモンド

 

そうなんだ...

と思いましたね。また記憶力やスピートは10代の頃が一番良いので、その時に没頭できたのが良かったようです。

自分自身のことを思っても、16歳の頃、高一の頃の記憶力はとても良かったですね。

以前は、藤井四段は、人生いろいろな経験をするのに高校に行ってもいいのではないか、と勝手に思っていました。

でも、やはり十代にしかない、記憶力やスピード、それによる自分の進化を考えると、高校に行かずに将棋に集中した方が、自分の目標に達成できるのではないかと考えが変わってきました。

本人はまだ悩んでいるようで、結局は本人の考え次第だと思います。

まわりがどうすべきという問題でもないと思います。

でも、

やはり高校に行かずに将棋に集中する

のではないかと思います。

なぜなら、本人には、前述した目標がすでにあるので、若くて勢いがある今の方が目標を達成しやすいからです。

 

おまけ: 新たなるレーティングモデル: カルマンフィルタの利用

イロレーティングについては、ご紹介しましたが、新たなレーティングモデルを考えました。

なぜなら、現在の値が藤井四段の実力値を反映していないと考えたからです。

少し専門的になりすぎているので、必要のない人はパスしてください。

  • 強さが反映されるまで時間がかかる
  • 自分の強さの進化やトレンドも考慮されていない

という点が気になっていました。藤井四段の記事を書いてもレーティング通りの予想結果にならないからです。

よって、新しいレーティング手法を考えてみました。

方法としては、「本人の強さ変異モデル」、「カルマンフィルタ」を使うというものです。

なお、カルマンフィルタをある程度わかっている人しかわからなさそうな非常にマニアックなものですので、スルーしてもかまいません。

 

本人の強さ変異モデル

これは、後述するカルマンフィルタにおける、システムの状態方程式を設定するために、設定します。

さきほどの雑誌の記事にあったように、10代後半までは、本人の実力が直線的にあがっていく、というモデルを藤井四段向けに組みます。

20代になってももちろん実力はあがっていきますが、どの程度の上がり方になるかはここでは取り上げません。

強くなり方は、脳の発達がどうなるかにも関係しています。

有名なのは、スキャモンの発達曲線です。

でも、脳の発達は、5歳位で飽和に近づいています。

これは自分の体験と比べてもへんだなと思います。

一番関係しているのは、脳の「ニューラル結合」が膨大に増えることではないかと考えます。

同じ刺激を加えてもそのピークが10代後半ではないかと。

このニューラル結合(シナプス結合)というのは、大人になっても、強い刺激を継続的に与えると増えるものなのです。

例えば、私が30代前半に、同時通訳の学校にいって、厳しい訓練と、膨大な単語の暗記を宿題として強要されましたが、暗記を繰り返して一ヶ月もすると、暗記力が格段にあがったことが実感できたのです。

10代では、特に、そのネットワークを増やすことが得意な年代のため、記憶力もよくなったのではないかと考えます。

よって、藤井四段の強さのレーティングの真の値があるとすれば、それは、

少なくとも10代後半に向かって、直線的に増える

と仮定します。

一次直線でなく、二次関数かもしれませんが、自分の実態としては、一次的でそのあとで飽和してきたとの実感があるので、一時関数としました。

 

カルマンフィルタ

カルマンフィルタですが、少し簡単に説明します。

この理論は、現代制御理論から来たものです。応用としては、例えば、宇宙機の航路の推定に用いられています。

システムの状態を表す方程式と、それを観測した観測方程式と二種類のものから表され、簡単にいえば、誤差の二乗を最小にする、推論アルゴリズムを組むものです。

観測する値を利用するだけでなく、システムの状態や運動を加味し、またシステムのゆらぎも考慮するので精度の高い推論ができるようになっています。

では、二週類の方程式を概念的に立ててみましょう。

 

システム状態方程式

ここで、システムとは、藤井四段のある時点での強さの真値を示すものと定義します。

藤井四段の強さ(対局後) = a x 藤井四段の強さ(対局前) +   b

とします。

まず、この藤井四段の強さの表し方ですが、イローレーティングを補正し比較することを目的とするので、サンプリング数を幅をもって多くしたときのイローレーティングの値を真値と定義します。

過程としては、20サンプリング辺りが妥当として、

1800点, 1700点、1600点, 1500点の棋士とそれぞれ4回以上対戦した時の値

とします。

現在、そういう対戦はしてませんので、観測も不可能ということになります。

また、イローレーティングでは、1500から開始しますが、本人の力が1500が初期値というのは実力から考えてもやはりおかしいです。

現在1700点付近ですが、今までの連勝記録からして1700は超えており、これも1800,1700の対局を少なくとも三度から五度ずつは実施してサンプル数10をもとに、初期値を決めるべきと考えます。

なお、係数のaは、藤井四段の実力があがる勾配係数、bは、システムのゆらぎを意味し、藤井四段の強さが真値付近にゆらぐことを意味します。

そのゆらぎは、実力のあがり方のゆらぎで、本人の学習の濃淡、体調、その時の取り組み方等を含めたもので設定されます。

イメージ図は以下です。

本人が1900点を目標にしているので、これを制御値にしています。でも、この点数以上にも増えていくと想定します。これが難点になったら飽和するか、そこは今回の検討の範囲外にします。

イロレーティングは、初期値が1500と小さいため、真値に近づくまでは時間がかかります。

1500点が本人の実力なら、収束も早いですが、これより実力が上なら、点数の高い人と対局していかないと結果が反映されないからです。

 

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観測方程式

上記の真値に対して、実際の対局を観測した結果の方程式は以下になります。

観測のレーティング補正計算値 = 藤井四段の強さ(対局後) + c

とあらわします。

まず、このレーティング補正計算値は、イロレーティングそのものの計算ではなく、初期値を変えたときのイロレーティングの勝敗後の計算値を「観測の値」としています。

藤井四段の対局後の強さの真の値(だんだんと強くなる)だけではなく、誤差成分のcが入ってます。

これは、対局者との対戦によるゆらぎです。すなわち、相手との相性とか、相手の攻め方とか、自分の範囲ではない、勝敗に関わる要因からくるゆらぎ成分です。

そうすると、さきほどの図は、以下のようになり、緑の点のゆらぎは赤のゆらぎよりも大きくなります。

つまり予想の強さの変化に対して、計算したレーティングは、誤差をより多くもったものになるとの解釈です。

 

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実際は、前提をいろいろと置いてやっており、カルマンフィルタの計算はプログラムを組む必要がありますので、ここでは概念的に説明しました。

実際、勝敗が同等あるのではなく、勝の数が圧倒的に多いので、+/-ではなく、正に増えていく平均値のまわりに点数が分布することになります。

なお、観測の回数を増やすと真値に収束してくるので、傾向はわかります。

実際、プログラムを組むと、以下のような実践になると想定します。

ブルーの線がその推定値です。

 

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プログラムまでは組みませんでしたが、反響あれば、組ましてもらいます。

 

まとめ

藤井聡太四段の数値目標は棋士レーティングで、今1700前後ですが、+200になりたい、とのことです。

レーティングは対局後に毎回計算できるので具体的です。

値の求め方についてもご紹介してきましたが、今後の傾向についても継続的にフォローしていきます。

 

 

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