日本の政府の借金が1000兆円を超えてます。20年程度前にも借金が500兆円を超えた時には、「財政破綻するのでは」と結構な騒ぎをしましたが、それからかなり月日が経ちました。
財政が破綻したり、日銀が異次元金融緩和を実施して、多量のお金を投入すると、「ハイパーインフレになるのではないか」との心配もあります。
戦争などの供給が立たれない限りハイパーインフレは起こらないとの話もありますが、はるか昔、1860代には、約8%の貨幣供給量の増加を続けた結果、約20~50%のインフレも3年程度で起こっており、3年で100%のインフレなのでハイパーインフレになっています。(3年100%インフレがハイパーインフレ)
一体、何が本当なのでしょうか? 高齢化が進み、長らくデフレだった日本は世界でも特殊でなかなか、前例がないです。
財政の破綻については、資金ぐりから来るものがメインと考えますが、ここでは、国のバランスシートをとりあげ、どう考えていくべきかを、地方である市のバランスシート、それから民間会社のバランスシート、そして個人のバランスシートの対比により考えてみます。
個人のバランスシートと資金繰り
ロバートキヨサキの「金持ち父さん」にあるように、「資産」というのは、お金を生み出しているものを「資産」として買いましょう、と推奨される考え方があります。
お金を生まない「資産」は負債との考え方です。例えば、節税目的で不動産を購入したけど利益が出ず、費用ばっかりが出る場合は、「負債」との考え方です。
不動産の場合は、費用が出ていっても売却できれば、その分の収入が入りますが、それが買った時より安くなれば、当然損失がでます。よって、不動産の価格が5000万円であっても、時価評価をすると厳密に資産評価できます。
もし資産から逆に継続的に収入が得られれば、例えば、収益性のある海外不動産や、配当のある成長株を買った場合は、そこからキャシュが生まれるので、資金繰りは良くなります。
この額が、自分の給料より相対的に大きくなれば、資産が継続的に増え、また新たな投資などに使用できる資金繰りも良くなります。
逆に、銀行預金しかもたず、資産からの収入もなければ、自分の資金繰りは、給料のみとなります。
よって、
キャシュフローを生む資産の取得
が重要となります。以下の例は、不動産を買ってローンがある家庭のバランスシートです。
金持ち父さんの本に従って、投資信託や株式など収入が増える資産に投資をしております。ここからの配当や分配金、キャピタルゲインが給料にプラスして収入になっています。
また、不動産を所有していますか、あまり高すぎるものは購入せず、ローンの支払いが元本返済と利息分がありますが、家計の収支としてはプラスになっています。
では、住宅ローンの場合、収入に対する返済率はどの程度でしょうか?
- フラット35で収入が400万円以上の場合は、35%以下。
- 金利が1%以下だと収入の約10倍まで。
が相場です。あとで比較しますので、この数値を認識ください。
また、バランスシートからみると、資産から負債を引いても黒字であり、この家計の場合は、正味財産の比率は割と大きいです。
不動産価格は諸外国と違って日本は値段が買ったら下がることが多いので、最近は不動産の購入を控えて賃貸にする人も多いと聞きます。
企業のバランスシートと資金繰り
次にサービス業の企業を考えてみましょう。
企業は、投資会社でない限り、個人とは違い、資産運用で収益を上げる訳ではありません。
バブルの頃は、財テクなどといってそういう傾向も一部ありましたが、資産でなく、本業で稼ぐ、資産は「人的資産」です。
サービスを行うための設備やコンピュータなどはもちろん必要ですが、必要なことは、従業員により、他企業より競争的で魅力的なサービスを生み、そこから収入を得ることが資金繰りの基本です。
その収入があり、赤字にならない限りは銀行も融資をしてくれますので、融資が必要な企業は赤字にならないようにコスト削減を徹底し、また利益が出るように必死に頑張ります。
逆に、銀行融資が必要ない場合は、赤字の状態をあまり気にしすぎることはなく、中長期的に運営ができますが、放漫経営になる恐れも出てきます。
いずれにせよ、
資金繰りは商売から得られる収入がベース
になります。
以下がサービス業の上場企業から持ってきたバランスシートの例です。
ここで企業は借入金を持っているので、その分の返済や利息が、個人の不動産ローンと同様に支出にあたります。
この企業の例では、売上に占める返済額は24%です。
個人の不動産ローンと比較してもそれほど大きないので感覚的には大丈夫そうですね。
地方都市のバランスシートと資金繰り
地方都市においても、資産運用が目的ではないので、自治をするために必要なものを資産として持っています。
都市によって違うかもしれませんが、資産の大きなものから、
- インフラ資産(道路・河川など)
- 事業用資産(庁舎・学校)
- 投資その他の資産(出資金、基金)
- 流動資産(現金、財政基金)
などです。
資金繰りは、自分の都市だけの地方税でまかなえている都市は少なく、国庫支出金を多く支給され、また地方債を発行してまかなっています。
一点重要なのは、インフラ資産等の維持の費用は少しの割合で、資産により財政維持が困難ということはないことです。
「いらない道路を作って維持でもお金がかかる」というイメージがありますが、市のレベルでは、予算に占める道路の維持費は、0.1%程度です。
また、国庫支出金からの支給が多いため、(例:20%程度)、国の財政状態が悪化した時に、この分が削減されると影響が出ます。そういう状況では、地方税の上昇が予想できます。
以下が首都圏地区のある市のバランスシートの例です。
ここで右側の支出の「公債費」に着目してほしいのですが、これは個人の不動産ローンと同様、元本と利息の支払い分が両方はいってます。実は、国の財務諸表では元本返済分がなく、利息分だけなのです。
バランスシートや損益計算書の考え方は、そもそも企業を適切に評価するために持ってきたものです。投資家や銀行はその内容をそれまでの年度の推移含め、資産、負債含め、損益計算書で利益を生む構図がどうなっているか精査します。
国や地方のバランスシートは、この考え方をもとにしたものですが、企業のバランスシートと違うとり扱いをしていたら、事実がわからなくなる、あるいは何かを隠蔽している可能性があるので、要注意です!
ただ、企業の損益計算書では、確かに支出は金利の支払い分のみで良いこととなっておりますので、どちらかといえば、キャッシュフローを見ることになります。国や地方のものは、損益計算書というタイトルにはなってないので、ここでは簡略化のためキャッシュフローを加味したものとして扱います。
この市では、収入より支出が多いので、合計はマイナスになっており、地方債で補填しています。
個人の住宅ローンと対比しましょう。
返済比率は35%までだったので、赤字比率は約7%なのでまず良いでしょう。ただし、赤字体質は良くないです。
収入に対する借金の割合ですが、1.5倍です。住宅ローンで最高10倍だったことを考えると良さそうです。
この市は現在は赤字体質ですが、それほど大きく問題はなさそうです。
赤字比率は、実質赤字率の略であり、
実質赤字率 = 一般会計等の実質赤字額 ÷ 標準財政規模
です。
国の方からの指示で、数値が悪化すると、改善計画をたてなければいけなく、
早期健全化基準: 16.25%
財政再生基準: 30%
となってます。
個人の場合でも毎月収入が50万円として、支出が50+15=65万だとマイナス15万で30%になるので、当然改善が必要な額ですね。
国のバランスシートでもどうなっているか、この数値を覚えておきましょう。人にはこういう指標を出しながら、国はできていない気がします....
政府のバランスシートと資金繰り
政府のバランスシートについては、国単体の一般会計だけでなく、特別会計を入れ、それから国の子会社のような特殊法人も入れた、連結財務諸表で見ていきましょう。
なぜなら、たとえば、国単体の収支だけみると、「年金支払で赤字」なる円グラフを過去に財務省の資料で見ましたが、そこには、年金支払いの収入が入ってませんでした。
これっておかしいですよね。よって、特殊法人も含めたコミコミのものでチェックします。
なお、日銀を入れたものがなかったので、日銀は除いています。
以下が国の連結のバランスシートです。
資産より負債が多くなっているので債務超過です。なお、個人でも、企業でもそうですが、債務超過になったからといって破綻を意味はしません。資金繰りさえできていれば運営を続けられるのです。
たとえば、個人が資産が0で借金が1000万円あっても、収入がプラスであり確実に借金を返せるのなら問題はないのです。
収入と支出を見ると、収入が157兆円で支出が166.8兆円。赤字額は9.8兆円。
この額自身を見ると、確かに赤字ですが、額の比率はそれほど大きくないですね。
住宅ローンと比較するために、収入に対する借金額を計算すると、
1469/157=9.35倍
不動産の場合は、最高10倍までだったので、ぎりぎりSafeレベルです。
それでは、地方自治体と同様に、実質赤字比率をみましょう。
赤字比率は6%で、地方自治体よりも少ないですね。
でもここで気になることを発見しました。支出が「支払い利息」となっているのです。
もし今は低金利ですが、もし金利が5倍になったらどうなるでしょうか?
支払い利息が5倍になり、赤字比率は20%になります。早期健全化の計画を出さないといけないですが、これでもまだ破綻的ではないですね。
ただ、金利が5倍になっていても新規に借りる分のみが適用なので、実際はこれほどすぐに大きくならないです。
また、良く考えると、「支払い利息」のみというのはおかしいです。個人も地方も「元本返済+利息」だったからです。
その数値を出していないのはなぜでしょうか? 何か意図的な気がします。市のレベルと国のレベルの評価基準が違うのはおかしいです。
それでは、この元本返済分、すなわち、国債の償還にかかる費用も計上して収支をまとめてみます。
なんと、157兆円の収入に対して支出が276.1兆円!
デカすぎます。どう考えてもおかしいですね。
収入157万円の金持ちの人は実は毎月276万支払って赤字が119万円。
この場合の赤字比率は43%です。個人の住宅ローンの35%も突破しています。
よって、早期健全化計画でなく、財政再生計画を作らないといけません!
でも作ってないですよね。市町村に指示するのなら、自分もその通りやらないといけないと思いませんか?
ここでも道路の維持は、詳細データを見ると1%以下です。大きいものから見ると、借金の返済、社会保険、補助金の順になっています。
また、実際のPLでは、借金返済額はPLには入ってこなく金利のみです。借金返済額含めた資金ぐりは、キャッシュフロー表で別途計算できますが、ここでは、簡略化しました。
借金を続けたとしたら何年持ちそうか?
次に、借金をし続けたとして、何年位、日本の財政が持つのかシミュレーションしてみましょう。
前提としては、国債を買い続けてもらうとします。よって資金繰り上は大丈夫です。つまり破綻はないことになります。
いくら借金総額が莫大であろうが、収入より支出が莫大でも、資金繰りとしては大丈夫です。
どこまでぎりぎり続けられるかといえば、収入のすべてが支払い金利でなくなる場合ではないでしょうか? つまり支出するお金がない状態。
どう考えてもおかしい、と思えるレベルです。納税意識もなくなりますね。
毎年30兆円の国債が発行され増え続ける前提で、金利上昇がない前提でシミュレーションしてみます。
平成30年度で国債発行残高が881兆円、毎年30兆円ずつ増え、そのトータル額に比例して、支払い利息の7.5兆円が増えるとします。
本当は国債以外の公債や経済成長率、税収の変動などありますが、単純化して現状維持だとします。金利も同じです。
臨界点が収入の157兆円だとします。
すると、2100年になっても、支払い利息は28兆円程度なので大丈夫です。
今は国債の表面利回りが0.1%程度ですので、これがもし3%、つまり30倍になった時について計算してみます。現状、国債の残存年数は10年程度と想定し、10年後に30倍になり、それまでは漸増することとします。
すると、2028年頃に、収入より上回る支払い利息となります。
2027年までが利払い9.79だったとしても急激に301超円の支払い利息となります。実際はいろいろの種類の年数の国債を購入するので、びったりこの通りにはならないと思いますが、急激に変化する、ということにはなるでしょう。
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まとめ
バランスシートを個人、法人、市町村、国と比較してみました。
国の連結財務諸表によると、借金総額は比率的には、収入に対して9倍ですのでぎりぎり警戒域です。また収入に対する赤字比率は43%で、問題があるレベルで財政再生計画を作らないといけないです。
連結財務諸表でみると、
157兆円の収入で、276兆円の支出をしている、これはやはり支出が多すぎますのでこの事実の認識から始める必要があります。
借金は急には減らせませんし、実際に、国は地方と違って国債を日銀に間接的に買ってもらう手段があります。また借金を全額返済する必要もありません。
シミュレーションしてもわかるように、金利をずっと低く抑えられたら、すなわち、日銀がずっと国債を購入し続けたら、危機的な状況はこないので、この方策で長期的に対応するしかなさそうです。
では、低金利が続けられれば、国に財政問題は長期的になくなるのか?
長期的にずっと低金利で問題がないのかについては以下にまとめました。問題あります。これらのことは事実なので直視して対応を考えて行きましょう! 「国の借金問題ない」とかの論評をそのまま信じないようにしましょう!