政府の借金が1000兆円を超え、また債務超過状態なので、財政破綻などを心配していましたが、それだと見方が一方的になるので、ここでは、以下のことが長期的にわたって起きないシナリオを考えました。
・財政破綻
・年金破綻
・預金封鎖
・ハイパーインフレ
なお、長期的というのは30年以上のことを想定しています。
このシナリオに基づき、今後の日本の政府や日銀の動向、経済の動向をより良く理解し、対応する一助となれば幸いです。
財政破綻の条件
政府の財政を問題にする時に、借金の絶対的な額やバランスシートで論ずることは多いですが、一番見るべきポイントは資金繰りです。
これは民間企業でも同じで、黒字でも倒産するのは資金を準備できず、支払いができないためです。
政府の財政についていえば、借金を国債発行という形でお願いした時に、買ってもらえるか? ということです。
もし国債を買ってもらえなければ、政府はお金を調達できなくなり、組んだ予算の執行ができなくなり、短期間の数ヶ月であれば、やりくりしますが、それ以上であれば、公務員の給料が払えない、地方にも交付金を出せない、など大がかりに国レベルで影響が出てきます。
国債を買ってもらえなくなる、というのが財政破綻の条件と考えます。
国債をどう買っているかですが、
1)国民が買う
2)民間銀行が買う
3)日銀が買う
4)外人に買ってもらう
という4種類があります。
昔は金利が多少ある時には、1)があり、資産運用手段として、「安全です」と言われている時期もあり宣伝されてました。でも現状はそのような宣伝もないですし国民はほとんど買いません。
恐らく皆危ないと思っているはずです。財政出動派も買わないですよね。
2)もありますが、現在、民間銀行は国債保有額を減らしています。これは黒田日銀総裁による、異次元緩和により、民間銀行の国債を日銀が買い、その代わりお金を民間銀行に振込み、そのお金を貸し出させることで経済を良くしようとしているからです。
また、暴落する場合の国債保有リスクも考慮しているはずです。
なお、セブン銀行のように手数料収入中心の銀行は国債保有額はゼロです。貸出がメインではないからです。新生銀行のような外資系の銀行も、国債保有額はもともと少ないです。
3)については、現在、メインで実施されているものです。日銀が直接引き受けることは財政法第5条により、直接的には禁止されているため、民間銀行が買ったものを転売してもらって購入しております。
2018年6/E時点で、日銀は全、国債のうち、45%程度保有するようになりました。民間銀行は、42%です。
つまり日本の借金のうち、中央銀行が45%を肩代わりしていることになります。
さて、この45%をどう考えるか。
まだ55%も買えると考えてみましょう。
もし中央銀行が国債を100%持っていたら、日本の借金はすべて、中央銀行が支払っていることになります。
民間銀行経由にせよ、中央銀行がすべて借金を引き受けて、お金を日銀の持つ当座預金に振込み、また、民間銀行は当座預金から政府に支払います。間接的ですが、日銀から政府に支払っていることになります。
もしこれが再現なく許されるのなら、政府が欲しいお金を日銀がいくらでも買えることになります。そうすると、年金支給年齢を逆に早くしたり、支給額を上げたり、消費税をゼロにして、それらを全部借金にしてしまうことでもできませんか?
また、極端な話、国債を大量に出して、国民ひとりに100万円配ることもできますよね。(約100兆円)
でもしないですよね。
もし後者のように、国民ひとりに100万円を配ったら、「働かなくても政府がお金をくれる」と国民が思ってモラルがなくなり、税金をきちんと払っている人から見ると、「働くのはばかばかしい」と思うようになり、努力や秩序が社会から失われるためと考えます。
また、前者のように、年金支給額を上げたり、消費税をゼロにするのなら良い気がしますが、これも明確なラインがないにせよ、政府が財政規律を気にしているからです。つまり収入に対して支出が多いため、財政規律を図ろうとしていると。
2018年度予算で見ると、発行する国債総額(借り換え含む)は、149兆円。そのうち、財政不足のために発行する新規国債は、33兆円。
そして、日銀は、80兆円買い取るといっていたが、実際は60-70兆円程度であり、国債買取額を増やすのではなく、減らしてきていて、金利を低く抑える運用に変えてきています。
日銀は、インフレ目標2%を目標にしながら運営をしており、「財政は政府の問題」といいながらも日銀がその財政を悪化させる低金利を許しているので、財政問題も気にしているはずです。
民間銀行から見れば、日銀がずっと高値ですべて国債を買ってくれるのなら、国債を購入して日銀に転売するでしょう。
ただ、日銀がすべて購入してくれなくなったら、民間銀行は、国債を買うか。
現在、当座預金の金利が0.1%ですので、国債の表面利回りが0.1%より上の場合は、他に有利な資金の運用先がない限りは買うでしょう。
ただ、他に有利な運用先がある場合、つまりリスクを考慮しても、0.1%より高い運用先があるのなら、国債でなく、他の物、例えば海外の債権などや投資を行う可能性もあります。メガバンクほどその傾向があります。
しかし銀行は減点主義的なところもあるようで、失敗するよりは、0.1%の利回りの商品の方が良いと考えるかもしれません。
国債購入がさらに減る条件は、以下によると考えます。
1)国債以上に収益のあがるビジネスに資金を投じるようになる。
2)株主からの圧力により、国債保有より収益の高いビジネスにシフトするようになる。
この条件になり、国債を買ってくれなくなると、政府は困ります。よって、政府は金利を上げざるを得なくなります。
金利を上げると国債の魅力が高まりますので、また購入されるようになります。
ただ、これは1),2)との相対的な関係になります。
また、民間銀行が国債を買うにしても、その資金は当座預金から持ってきますので、当座預金以上には買えないのか?
よって、国債発行額がどんどんと雪だるま式に増え、当座預金でまかなえる額まで増えると購入できなくなるのでしょうか?
2018年11月現在、当座預金総額は、392兆円です。国債発行額は2018年で149兆円です。
この中で、当座預金は一定で、国債発行だけが増えていくことはありません。国債発行が増えると、その分、当座預金にお金が日銀よりフリマれるのです。よって、当座預金から来る制約はなさそうです。
当座預金に振り込まれたお金が、国債を購入せず、民間に貸し出されていたり、ドルを買われたり、株を買われたりしても、そのお金は取引した相手の銀行に振り込まれます。そしてそのお金が国債を購入しない限り、また当座預金に振り込まれることになります。
基本的に、国債を民間が積極的に購入しないかぎり、当座預金のお金は減らないのです。
現状は、日銀が民間の国債を高く買ってくれるので、民間の銀行は努力せずに転売で利益を挙げられます。日銀が高値で転売先になる以上は、民間は書い続けるでしょう。
問題は、日銀が高値で転売先にならない時です。それは、日銀国債引受の弊害が出て出来なくなった時でしょう。その時に、銀行は高値で転売できないのなら、金利が高くないと、利益にならないため買いません。ただ、金利を高くしても売れなくなるほど、国債の信任が低下した時が危機です。
まとめると、財政破綻の条件としては、
- 民間銀行が他に有利な運用先があり、国債購入をしなくなる。
- 日銀が国債の転売引受をしなくなった時で、金利を高くしても国債がさばけなくなった時。
これらのことがあると、破綻になる可能性があります。
中央銀行が国債を多量に買うことの副作用
民間が市場にて自由に国債を評価し取引するのではなく、官である中央銀行が国債を多量に買う副作用はなんでしょうか?
これは、
・市場原理が働かなくなること
です。
どういうことかというと、この国債の売買は、利益があると思い、市場で取引がされていますが、日銀は利益を追求していません。利益がでなくても高値で買います。
よって、高くなったら、買うのを控える、ということや、数が少ないから高くなる、また、数が多いから安くなる、という市場原理が働かなくなるのです。
民間は経済合理性に基づいて活動しますから、この国債の市場は、官製市場であり、経済活動を歪めてしまいます。
つまり、本来なら金利が高くないと売れない国債なのに、安めに政府が発行できるから、借金もしやすい、財政規律を儲けなくても助かる、ということになります。
民間銀行も努力さほどしなても転売利益があるので、諸外国と比べ、銀行の能力が下がります。
また、金利を安く抑えて発行するので、市中金利も安くなり、貯金を沢山持っている国民がもらえる利子による収入もなくなってしまいます。
国民から利子収入を取り上げ、財政規律のない借金をして、そのツケを増税で国民に回すという歪んだことを生み出してしまうのです。
これが市場原理を働かせていたら逆になります。
数十年前から、国民の中では、「年金は大丈夫なのか?」との疑問があり、小泉政権の時には、「100年安心」とか言っておきながら、支給年齢を65歳からさらに伸ばすための伏線を政府はどんどんと貼っています。
年金不安・老後不安というのが一番の不安だと思いますが、逆に金利が高くて、たとえば、5%程度あれば、金利収入も得られますので、年金不安や老後不安も和らぎます。
これがずっとできない政策になってしまうのが副作用です。
シニア層がこれからどんどんと増える日本においては、シニアから見ると、買うものはほとんどないので、デフレの方が同じお金で買えるものが増えるので助かるのです。
若い人から見れば、デフレになるので、消費を抑えるとありますが、多少のインフレだろうが、デフレだろうが、そんなに消費行動は変わらないのではないでしょうか? 大多数の日本国民と若い人は「低欲望」です。
欲しいものはそれほど多くないのが実情だと観察しています。スマホがあればそこそこ楽しめますし。
インフレにする、とかデフレにする、とかいうのは、経済の結果としての成績なので、無理に政府が財政や金融緩和で介入しない方が良いという考え方もあります。これは市場主義の考え方です。
早めに政府の財政にアラートがなり、政府と国民が早めに一生懸命修正する、ということができにくくなっているのが、現状の副作用と考えます。
財政破綻の条件が起きないための方策
財政破綻の条件を述べましたが、逆に破綻が近くなると、政府は、財政規律をより求めて国債発行額を減らす、つまり税収はすぐに増えないので支出削減を思い切ってすることをするはずです。
これは不景気やデフレをまた加速させます。
日銀も、デフレを防ぐために、国債や資産購入をまた増やす、という対応をとるはずです。
これらは、急には起きないかもしれません。なぜなら、民間銀行がある時点から急に国債購入をストップするとは考えられないからです。段階的に購入額を、現在までと同様に減らしていくはずです。
もし急に起きるとしたら、外的な要因かもしれません。たとえば、国債が買われなくなり、売りが急増し、その状態を見て民間銀行が国債購入をしなくなるような場合。ただし、この場合も、日銀が購入の意思を示せば、転売できるので、また市場は落ち着くし、落ち着かせるように、日銀と政府は真剣に対処するでしょう。
また、他のシナリオとしては、日銀の政策と、政府の積み重なった債務や財政規律がないことにより、円安が市場で想定以上に進み、円の信任がなくなり、ドル買い、国債売りなどが同時に起こることもあるかもしれません。
その場合も、物価があがりすぎるような円安阻止に、政府は動くでしょうし、国債売りが大量に出ても、日銀が買い取りに向かうでしょう。
これらの異常な事態が幾度か起きれば、政府と、日銀も、「財政規律を持つこと」「日銀が市場に介入して国債を買いすぎること」をしない方法にせざるを得ないので、逆にこれらのことが起こったとしても、財政破綻を防ぐことで有効になるでしょう。
ただ、積み重なった政府と日銀債務が膨大なため、債務の削減や解消には長い年月がかかるでしょう。バブル崩壊後の民間債務の返済に長い年月がかかったのと同様に。また、債務の削減をすべてする必要はないですが、どこまでに落とせば良いかというのは不明です。少なくとも持続可能で、経済活動に中長期的に悪影響が出ないレベルが設定されると考えます。
政府と日銀はいろいろな対策を打つと考えますが、円や国債が市場で売買されている以上、どのような異常なことが起こるかは予測できないこともあります。
1860年代には供給力を持っているにも関わらず毎年8%程度のマネーの増加で高いインフレ(20-50%)になりました。これにはさらに社会の混乱もあったと聞きます。
日本が中国と尖閣で、あるいは北朝鮮と戦闘状態にでも、もしなったら、輸入物資の不足懸念からインフレが進み、外国から円売り、国債売りを一気にされるリスクが考えられます。
すると国民は銀行のネットワークの破壊を恐れて出金をして現金を保持したりして、当座預金残高が減り、国債買い付けが出来にくくなるかもしれません。取り付け騒ぎで金融不安になるかもしれません。
この時、民間銀行は当座預金不足で国債買い付け出来にくくなるかもしれませんがその時は短期的に、日銀による国債直接買い付けで対応すると予想します。
なお、財政破綻が起きようが、起きまいが、どういう資産運用したらいいかは実例で、以下にまとめました。
まとめ
財政破綻(年金破綻・預金封鎖)やハイパーインフレが起こると、かなりの影響が国民に出てしまい、現状の財政規律のない運営や政府の連結財務諸表で債務超過額がどんどんと増えていることは国民の不安につながっています。
そんな中で、財政破綻が起こりそうな条件をまとめ、起こらないであろうシナリオを説明しました。
このシナリオは、財政破綻の兆候が現れて政府と日銀が対応せざるを得なくなるため、破綻を回避できるというものです。
この通り、あるいは別の方法でも良いですが、破綻が回避できることを祈ってます。
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