東芝が巨額の赤字で、2017年3月末決算の債務超過額では、6200億円程度になるとのことです。
債務超過というのは、簡単にいうと、会社の資産を全部売り払って借金を返したとしても財産は残らず、負債が6200億円返さないまま残っているという状態です。
監査法人の合意が得られなかったため、合意なしに決算発表するという聞いたこともない対応をしてます。
監査法人変更でまとまるのか、今後どうなる可能性があるのか、現時点での市場の評価はどうなのか検討してみました。
監査法人変更でまとまるのか
監査してもらったら都合が悪かったので監査法人を変えると言うのはどう考えても禁じ手だと思います。
もし監査法人を変更し、都合のいい結果になったとしたら、日本の監査法人のいい加減さを疑うこととなります。
監査法人が適切な監査をしてないから、あるいは粉飾決算で問題になったことは過去にもありました。
オリンパス、カネボウ、ライブドア、山一証券、てるみくらぶ....
こういう問題があったため、監査法人の存在意義が問題視され、適切な監査ができるようになっているはずです。
監査法人の信頼度が下がると、株式市場でも企業の数値に基づく成績が評価できなくなり、信頼を失います。
例えば、どういうことかというと、売上、利益の数値は悪いが、会社に資産があるから大丈夫という時に使用する指標でPBR(Price Book-value Ratio)というものがあります。
PBR = 株価 ÷ 一株あたりの純資産
これが1以下だと、純資産に比べて株価が安いから倒産したとしても株価は、今より高く清算できるので損しないという意味です。
ところがそんなことは実際なく、資産があると粉飾しているため、例えばPBRが0.3とかの値で割安だと思っても、実際は赤字なので株価は0円以下のはず....でも粉飾されているから分からないのです。
そうして突然倒産します。
実際そういう例を市場でも見てきて、会社の監査はあてにならないし、会社の純資産もあてにはならない、PBRもあてにならないと長年思ってました。
今回、監査法人変更で、東芝よりの監査意見に変更になったら、監査法人自身の監査を疑う大きな問題になります。
逆に監査法人を変更しても同じ意見だったとしたら、監査法人の健全性はある程度保持できますが、東芝としては逆に企業継続について疑義が出され、上場廃止の可能性が高くなることになります。
上場廃止となると、会社の信頼度も落ち、厳しい経営をしなければいけなくなりますし、銀行借入も出来なくなり、破綻するかもしれません。
今回の場合は、米国の子会社の経営がうまくいかないという理由で起きたことで、東芝本体でまじめに働いている人にはほとんど責任がないと思います。
破綻すれば、「社員には何の責任もありません」という昔の山一証券の社長会見を思い出してしまいます。
社員にも迷惑をかけたくないため経営陣も必死なのだとは思います。
でも、監査法人の健全性を担保することの方が重要なので、たぶん監査法人を変えて意見が大きく変わってくるということはないのではないかと思います。
今後どうなる可能性があるのか
東芝自身は社員には良い企業だったと思います。
自分が就職の時でも一番成績が優秀な人間は東芝に入社していましたし、学生の中でも東芝は技術者思いの良い会社だと聞いてました。
製品でいえば、ラップトップのさきがけを作った「Dnya Book」を出してますしね。
GEの過去の社長、ジャックウェルチの有名な「選択と集中」という言葉に乗って原発事業を選択して集中したら、とんでもない結果になった、逆にリスク管理ができてなかったんだと思います。
ちょっと前でいえば、あれほど液晶を席巻していたシャープが経営危機になり、台湾の企業に買収されて復活しかけてます。
東芝は稼ぎ頭であるメモリー事業を売却すると、一兆円とも、二~三兆円ともいう巨額のお金が調達できるとのこと。
そうすると債務超過の6200億円も回収できることになります。
これは東芝にとっては安心できる材料です。
メモリー事業以外は存続ということになると思います。
上場廃止になろうがなるまいが、存続することになると思います。
でも、はっきりいって、このメモリー事業の評価も投資家にとってはとても分かりにくいですね。
資産を全部売っても借金だけが残るのが債務超過なのに、実際そういう優良資産があるのならなぜ評価しなかったのか、また監査の時にその事業もなぜ評価されてないのか。
事業の価値をお金で評価する手法はあるのに。
恐らくメモリ事業は簿価であり、市場で競売に掛ける対象ではなかったとの回答だと思いますが、企業存続に疑義があるのなら、その分の優良資産を評価に入れた上でそういって欲しいものです。
監査や会計の詳しいルールは分かりませんが、こういう不透明さは実態の数値がわからず混乱するだけなので辞めて欲しいと思います。
きちんと時価評価するようにして欲しいと思います。
現時点での市場の評価はどうなのか
株式市場での評価をなぜ参考にするかというと、株式市場では、多数の個人や機関投資家が売買しているので、株価とそのトレンドを見ることによって、大多数の意見としてその企業がどう評価されているか、トレンドを含めて確認できるからです。
シャープは、台湾の鴻海に買収されるまでは、株価はどんどんと下がり、91円までになり、その後は400円以上に切り返しています。(以下参照)
それでは、東芝は今市場にどう評価されているのでしょうか。(以下参照)
450円代から急落してますが、一方的に下げるのでなく、最近は切り返して上げていますね。
これは市場が、メモリー事業の売却で危機を脱すると受け止めているからだと思います。
直近の決算は4/11の第三四半期決算とのことです。
証券会社のデータでは、先程述べたPBR=2.83。
つまり債務超過ではなく、株価は純資産の2.83倍高く、割高ということになります。
市場としては、東芝の破綻リスクは感じてはないし、また上場廃止になるとも感じてないこととなります。
ついでに東芝のB/S (Balance Sheet)を見て、純資産(債務超過か否か)をチェックしてみます。
純資産は、299億円あると第三四半期の資料には書かれてます。(監査法人が合意しなかったもの)
メモリ事業売却による収入については記述はありませんでした。
これが本当なら債務超過にはならないこととなりますが、不正会計をしてきたので、残念ながら信ずる訳にはいかないのが普通だと思います。
まとめ
東芝の巨額損失の問題について、監査法人変更でまとまるのか、今後どうなる可能性があるのか、現時点での市場の評価はどうなのか検討しました。
その結果、
- 監査法人変更でも結論は大きく変わらないのではないか
- メモリー事業以外は存続
- 市場の評価としては破綻するとも上場廃止になるとも思ってない
と検討しました。
一企業の問題ではあり特別扱いされるか否かは分かりませんが、以下の記事でも述べたとおり、「高度な製造業」の国際間の競争で日本は弱体化する可能性があります。
アップル1千億円ファンドで米国製造業へテコ入れ!その内容と日本の製造業への影響は?
今回の東芝の件は、東芝にけじめを付けてもらわなければいけませんが、国や当事者自身は、ヘタな選択と集中をするのではなく、製造業をより進化させていく対応をして欲しいと考えます。