教育無償化が昨日(2017年5月3日)の安倍総理のビデオメッセージの憲法改正の項目に加えると発言があり、また本日、日本維新の会橋本氏は教育無償化の財源案を提示しました。
特に大学以降に関して、日本の大学の現状、海外では大学教育無償化されているのか、教育無償化はどう日本社会を変えるのか、なぜ急に教育無償化の話しが出てきたのか、検討してみます。
日本の大学の現状
教育費の中で特に大きなウェイトを占めるのは大学ではないでしょうか?
子供を私立の中高一貫校に入れたとしても、その先の大学進学率を念頭においているはずです。
私立の中高一貫校も、社会が求める大学生は何かを考え、その中で大学がどう変わるか、大学入試がどう変わるかを先読みし、入試や学校のカリキュラムを考えてます。
私立大学の学費は高く、国立大学もそれより安いものの、費用もどんどんとあがってきてます。
初年度で、私立で110~150万、国公立で80万~100万台となってます。
私立が特に高くなっています。
これには学費関係の費用(通学費、下宿、本代、小遣い等)は含まれてませんが、その費用も中高よりは大きくなります。
また超有名私立を出ても就職できるとは限らないとの話も実例で聞きました。
こういう話しを聞くと、私も一児の父として、高いお金をかけて就職できないかもしれない私立に行く意義はあるのかと考えてしまいます。
家計を考えても大学にかかる費用が特に重荷になっていると思います。
昔と比較すると、例えば1981年で、国立大学の授業料は、18万円、私立大学で32万程度です。
都立大学に関しては、公立の高校より授業料が安かった記憶があります。
問題をまとめると、
- 学費は世の中デフレで給料も伸びないのにどんどんと高くなりかなりの重荷になっている。
- 国公立と私立の差も少なくなっているので成績優秀だからお金がなくても国公立ならなんとかなるという時代でもなくなっている。
- 大学に入ったからといって就職が保障されるわけでもない。
海外では大学教育無償化されているのか
米国の大学教育無償化の有無
良く聞く話としては、米国は大学の費用がとても高くて、学生がローンを組んだりアルバイトで学費を稼いだりしている話しです。
また、同時に奨学金の制度も充実しており、返済の必要ないものが多いと聞きます。
それでも世界各国から生徒が学びにくるので、魅力的な内容となっているのでしょう。
米国は教育無償化はされてません。
ドイツの大学教育無償化の有無
ドイツは大学の教育は無償化されています。
ある期間一時期有償化されたこともありますが、それでも年15万前後。
基本的には無償化されてます。
国際会議に出て、ブレークタイムの特になぜが大学の学費の話しになって、その時ドイツ人は、「ドイツの大学は学費は無料」とかなり誇らしげにいってました。
ユーロ圏の中でも、ドイツは、イニシアティブを持っていて中核的な国家で、また働いている人達も優秀です。
それでも労働時間はヨーロッパでも一番少なく、定時に仕事を終わり楽しんだ夕方を過ごしています。
でも通勤電車の中では、寝ているのでなくPCで仕事をしています。
高等教育が無償というのも関係していると筆者は強く感じましたし、ドイツ政府が国のために教育をかなり重視しているとも思いました。
シンガポールの大学教育無償化の有無
アジアで東大をぶっちぎりで抜いたシンガポール国立大学を有するシンガポールはどうでしょうか。
この国も資源はない小国なので、教育には相当熱が入っているはずです。
ところが、調べてみましたが、教育は無償化されていません。
学費も年60万から100万程度とのことです。
シンガポールは成長目覚ましく、裕福な人も増えているのでしょうか。
教育無償化まではしてないということです。
但し、シンガポールの国の予算は2割以上教育予算にあてているとのことです。
それでは日本ではというと....
対GDP比率のデータがほとんどで、OECD加盟国で最低とありますが、GDPではピンときませんので、毎年組む予算の何割か調べてみました。
財務省の資料によると日本の教育予算は全体に対して9.1%ですね。
シンガポールの半分以下の国家の意志ということになりますね。
これでは抜かれていくはずです。
また、中国やインドでも大学教育は無償化されてません。
結論としては、主要国ではドイツのみが大学無償化されております。
教育無償化はどう日本社会を変えるのか
予算がつけばいいっていうものでもないと思いますが、競争力のあるドイツやシンガポールを参考にしてもいいと思います。
そもそもその前に日本の問題
- 直面する世界にも例のない高齢化社会にどう対応するか
- 相対的に落ちてきている国際競争力をどう戻すか
という問題があると思います。
1番に関しては時間がかかってもやはり子供を産みやすく育てやすい環境を作るべきですし、2については、ドイツやシンガポールの例を見るように教育予算の比率をあげて行くことが重要だと思います。
特に新興国が追い上げてきてますので、過去には他の国々から模範とされ、まねされた日本の教育システムでしたが、今では教育を受け、良い大学に行っても仕事があるとは限らない...こういう状況を打破すべきだと思います。
IT系の専門学校の方が就職が大学より断然良いと聞くと考えも変わってきます。
必要な施作は
そもそもの仕事を作りだし、国際競争力を付ける施策が必要だと考えます。
また、そういう競争をしなくても済む仕事もあると思います。
例えば日本には、観光についての「おもてなしの心」や、仕事を一緒にしても「スケジュールを守る」と世界に賞賛される、普段あまり意識してない良い価値観があります。
このスケジュールを守るという日本の国民性と評価は複数の海外の人と仕事をして逆に実感させられるようになりました。
国際競争するものとは別に、そういう日本の利点を活かす国内市場向けの専門教育があっても良いと思います。
ずりずりと日本が埋没していくのではなく、必要な改革をするためなら高等教育の無償化はインパクトのある改革ではないでしょうか。
ただし、国としての費用対効果もありますので、無償化して、勉強する気のない学生にお金をつぎ込み、その学生も卒業しても就職できないという状況になってはいけないと思います。
また、最近は大学での勉強は早期の就職対応と授業の履修に関してかなりがんじがらめになっているようです。
企業からの求めにも対応するため大学もそうなっていると思いますが、今後の世の中で必要なのは、他の人でも人工知能でもできない感性に従った創造的な仕事だと思います。
私自身が授業をさぼり、遊びにいったり、また、バイトでプログラマーをして、大学以上に高い能力と実社会の経験を事前に経験できたことは財産でした。
それでも専門科目は面白くて勉強しました。
でも第二外国語のドイツ語なんてほとんど何の役にも立たなかったですね。文化人類学も....
社会に出たら普通融通は効きにくくなるので、高校以降の高等教育の期間はきっちり管理しすぎるのでなく、自由がある程度あっても良いと思います。(自由=創造性)
基本的には、国の30年~50年あとを考えると、まず教育予算の比率を増やすことが重要で、具体的には教育無償化には大学院含めて賛成ですが、個人的な案として以下が必要かと思います。
- 大学自身の競争と淘汰は必要。生徒数が減っている中ですべて今の大学をそのまま残して無償化させる必要はない。
- 大学の入試自体は、きっちりと実施し逆に難しくして良い。ヤル気のない人は今まで以上に入れない。但し、社会人になったあとも入れる制度を充実する。
- 大学一辺倒になる必要はなく、専門学校などの大学とは違うより職業に合致した制度・教育を充実・推進する。
- 教育の改革の成果を国際間で比較するため定量的に測れるようにする。
特に3については、シンガポールでも義務教育は、何と小学校まで!そのあと高等教育を受けるのかその他の仕事の方向に行くのか選択とのことです。
ドイツでは小学校が4年までで、そのあと大学に繋がるコースに行くか、そうでない場合は、職人かマイスター(親方)になるとのことです。
ここまで極端でなくていいと思いますが、大学に出たら、いい会社に就職できて、また定年まで働けるという価値観は崩壊しているので、あまり大学にこだわらない社会をつくり、大学以外の専門教育を充実し、そして大学に行きたくなったら再チャレンジできるというほうが良いのではないでしょうか?
また、好きな仕事につけて儲けられれれば良いですが、儲けが少なければ投資をするとか副業をするとか別の能力を持つように教育する制度があっても良いのではないでしょうか。
なぜ急に教育無償化の話しが出てきたのか
安倍総理のビデオメッセージで教育の無償化の話しは唐突感がありましたので、調べてみたら、維新の会の橋本氏がその政策を進めて憲法改正の柱としており、自民党と連携するために、安倍総理が踏み込んだ話しをしたようです。
では、自民党がそもそもどういう政策を考えていたか調べてみました。
自民党では教育再生実行本部というものが出ており、提言をしております。
うーん、現在の教師が抱えている長時間労働の問題はとりあげているところは良いとしていも30年~50年後の日本をどうするか、国際競争についての視点、大学教育以外の専門学校等の教育の充実等ほとんど触れられてない残念なものです。
また、その再生の成果を測定する指標もないです。
その中で、大学等高等教育の無償化の話しは一歳出てませんでした。
参加されている方がそもそも国際競争の経験がなく、教育現場からのボトムアップを中心に対応しているのでそうなったのでしょうか。
もっと実業界の人の意見が取り入れられるようにした方が良いと思います。
企業は死に物狂いで国際競争していますから。
やはり橋本氏と連携するために、教育無償化の話しが急に出たようです。
まとめ
大学等の教育の無償化について、世界の動向を踏まえて検討してみました。
無償化は、いくつかの条件を満たす必要がありますが、国家30年~50年の成長と習熟を考えて、守りの政策が多い中で、「攻めの政策」として重要と考え賛成です。
ただし、こういうコメントをする時に財源の話しもしないと絵にかいた餅で無責任なコメントになると思います。
財源としては、中心は、お金を沢山もっている人から取ってくる(奉仕してもらう)のが良いと考えます。
それから無償で高等教育を受けた人について社会人になった後、薄く負担してもらう。(月収の数%程度)
具体的には、企業や個人の対外純資産は、日本は世界一。世界一の金持なので、それらのお金を税金等の仕組みを考えて組み入れられるようにすれば良いと考えます。
それらのお金をもっている人も日本という国には貢献したいはずです。
その時に無駄なお金ではなく(例えばヤル気がないのにただで大学に行かせる)、効率的、効果的な施策であれば出すのではないでしょうか。
「俺は、お金に苦労して大学に入った、私は大学いかずにたたき上げた、だからそんな甘えた投資は絶対ダメ」
という声もあるかと思いますが、国家間の競争で優位を取り戻す、また、日本の良いところを伸ばす意味でも、今後の長期的利益を考えて、政府が制度設計をし、説得すれば可能となるのではないでしょうか?
また、自分が実業界に近いところに居たのでその観点からのコメントになりましたが、日本はノーベル賞を沢山出しており、基礎分野では国際競争力があると思います。
その施策については、今回の記事の範囲外とさせて頂きます。
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