2019/2/16
日本を取り巻く状況を見ると、1)財政規律を考えなければ破綻やハイパーインフレのリスクがある、あるいは、2)そんなことにはならないので、積極的にさらに財政出動せよ、との2種類の異なる訴えがあると認識しています。
今はその中間を歩んでいるように見えます。
経済的な理論や貨幣の話をしてみても、なかなか分かりにくいところもあり、また経済の新しい理論を入れたところで、それは実証されているものではなく、金融緩和も経済理論としては結果を出せなかったところもありますのでなかなか経済学者を信じることはできません。
財政規律がないと、どうなるのかを検討し、それから今後の日本社会がとるべき政策提言をしてみます。
結論として、財政規律がないとどうなるかを決定するプロセスは、国内外のマーケット参加者が為替・株価等の取引を経由して決め、そしてそれに基づいて被害を被る人々が時間差を伴って選挙で政党と政策を選択すること、と考えております。
要は、政治を変えるようなマーケットの状況と、選挙が運命を握っており、その結果、財政規律が選択されるということです。
予想としては、現在のデフレ状態はずっと続きそうな錯覚がありますが、長期的にはインフレが進み生活を脅かすことになると考えてます。最悪のケースがハイパーインフレです。
表面だけ説明しても足りないため、歴史も少し深掘りします。
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はじめに
日銀が民間銀行を経由して、国債を購入するのは財政ファイナンスではないか、財政ファイナンスを法律で禁じたのは、過去に世界でハイパーインフレになった経験からではないか、との議論があります。
それでは、通貨とは何か、銀行や負債とは何か、ハイパーインフレになるのかなどの話を調べるといろいろなことがわかります。またそもそも論として、その結果をお伝えして将来を予測して頂きたく、またここでは、「賢者は歴史に学ぶ」の精神で、少し歴史を調べてみましょう。
通貨の歴史と信用
通貨は、ヨーロッパでは、金の引き換えにユダヤ人が引換券を渡し、その後、金がなくてもその引換券が信用される限り流通できるとの話が有名です。
日本の場合の通貨は和同開珎が有名ですが、現在は、天武天皇が新しい国家建設のために流通目的で発行した富本銭(ふほんせん)が最初の通貨だと議論の対象になっています。
天皇などによる権威付けが信用を得るために行われたようですが、過去には、通貨の信用がなくなり、物々交換に戻った歴史があります。つまり、米や布での取引に戻りました。
銀行の歴史
現在は、民間の銀行や中央銀行があり、預金や貸付を行い経済の循環の機能を有しています。
日本で最初にできた銀行は、1882年設立の日本銀行ではなく、1873年に渋沢栄一により設立された第一国立銀行です。現在のみずほ銀行です。
日本で中央銀行ができた背景ですが、ハイパーインフレを防ぐためです。
明治維新以降、わが国は積極的な殖産興業政策を展開していましたが、財政的基盤のまだ固まっていない政府は、その資金の調達を不換紙幣の発行に依存せざるを得ませんでした。
そうした中、明治10年(1877年)2月に西南戦争が勃発し、大量の不換政府紙幣、不換国立銀行紙幣が発行されたことから、激しいインフレーションが発生してしまいました。
そこで、明治14年(1881年)大蔵卿(現在の財務大臣)に就任した松方正義は、不換紙幣の整理をはかるため、正貨兌換の銀行券を発行する中央銀行を創立し、通貨価値の安定を図るとともに、中央銀行を中核とした銀行制度を整備し、近代的信用制度を確立することが不可欠であると提議しました。
こうして、明治15年(1882年)6月、日本銀行条例が制定され、同年10月10日、日本銀行が業務を開始するに至りました。
ここで、不換紙幣とは、本位貨幣(正貨たる金貨や銀貨)と交換できないものです。現在の日銀券もそうです。
なお、最初の銀行ができる時のもとになる資本金はどうしたか?
これは、三井などの両替商が提供しました。
銀行の前には両替商が、金貨、銀貨、銅貨の取引や貸付を行っていました。
これらの硬貨は、富本銭などとは違い、材料の金属そのものが価値のある、価値が保証されているものです。
価値が保証されていない通貨は、例えば、今の日本円ですが、これは信用があるので取引されます。
負債とは何で、銀行の機能とは何か?
負債というものは、誰かから借りているもので、返さなければいけないとの約束により成り立っている取引・契約です。
返すことが約束できない相手に対しては、一般的には負債を負うことはしません。
バランスシートでみると、負債との引き換えに資産ができます。よって、政府の国債は永久化して返済しなくて良い、日銀が保有した段階で負債はなくなる、などの暴論がありますが、契約概念を無視したものであり、また経済のモラルを崩壊するものであります。
そのようなことを言っているノーベル経済学者や経済評論家に惑わされてはいけません。常識を使うべきです。
借金を返さなくていい世の中になれば、誰も貸さないですよね?
民間銀行は、お金の借り入れをしたい企業や人に対して、お金(銀行口座上のデジタルの値)を無から発生することができます。その裏付けとしてゴールドなどの実物資産を持つ必要はありません。皆さんが預ける預金を使う必要もありません。その代わり、これは契約であるため、借用証書や金銭消費貸借契約という文書を発行し、資産扱いをします。
なお、制約がまったくない訳ではなく、銀行は、自己資本比率の制約や、準備預金制度において、保有する預金に対して日銀当座預金に保有すべき準備預金額の割合である準備率が決められています。これを準備預金率といい0.05〜1.3%位です。
準備預金は、貸し出す時に計算する訳ではなく、貸出後の事後に決まる値で、常に変動していきます。
また、日銀も同様で、簡単に説明すれば、民間銀行から国債を購入する時には、国債の権利を契約上もらって、そしてその民間銀行の当座預金の口座のデジタルの値を書き換えるだけです。
まず政府が国債を50兆円発行したとします。①で民間銀行が購入します。民間銀行の資産側の銀行口座の50兆円と国債50兆円の資産が交換されて、②でそのお金は政府の日銀口座に振り込まれます。その振り込まれた口座で、政府は、財政が足りない分の支出をしていきます。
そして、その国債を③で政府に転売して、政府は、民間銀行の日銀の口座にデジタルの数値を④で書き込むだけです。
民間銀行から見ると、国債を購入する前と日銀に転売したあとでは、ほとんど変化はありません。厳密には転売で稼いだお金が少し入ります。
そして結果論でみると、日銀が借金の形として国債を保有し、お金を政府口座に50兆円入れていることと等価になります。
これを見てもわかるように、日銀は資金のもととなるものが有るわけではなく、無から有のお金が生み出され、それが政府の予算として政府職員や国民に使用されているのです。
これは日銀が市場で売買されるマーケット価格でなく、必ず高く買うことにより成り立っています。この「必ず高く買う」ということがないと、民間銀行は、国債を政府から買うことは控えることになります。
そうすると、政府は困るので、金利を高くして、購入してもらうようにします。
今、必ず高く買っているのは、現在の日銀の体制と、現在の政権であるためで、それが体制が変わっても未来永劫続く保証はありません。
政府が代わりに紙幣を発行できれば、良いのではないのか?
政府は、現在硬貨は発行して、発行した分原価を除いて利益になっています。日銀のバランスシートや財務が不安になるのなら、政府が紙幣を発行しても良いのではないか、と思われるかもしれません。
これも調べると、このようなことをすると、財政規律が緩んだりハイパーインフレになる歴史があります。政府の都合で予算を組み、第三者的なチェックがきかなくなるからです。
家計で考えても、お金をどんどん使うご主人だけで運営するのではなく、チェックが効く奥さんと共同で運営した方が健全になるのはわかりやすいと思います。
なお、例外として、シンガポールは、政府が発行の紙幣で運営しているとのことです。
経済理論は
現在、日銀と政府が行っている政策は、金融緩和それも異次元のものであり、エール大学の浜田教授が主導して、金融緩和でインフレ目標が達成でき、経済が良くなるとの理論でした。現在では、浜田教授は、それだけではうまくいかない、と過去の発言を訂正しています。
安倍政権が生まれる頃の浜田氏の図書を改めて読み直すと、現状とは違う楽観的な予測がかかれており、残念ながらはずれています。
「経済学者の進言で政治と日銀を動かしたが、結果は失敗した」という事実を我々国民は学ぶ必要があります。
ノーベル経済学賞をとった、スティグリッツ教授は、日本国債を永久化して、債務を返済しないで済めば、日本国民の不安もなくなると言及しています。この発言を効くと、「借金は返さなくて良い」という契約違反であり、また、政府の財政運営に関する国民の不安が逆に大きくなることも予見できておりません。
少し経済学者には厳しいですが、経済学を良くわかっていて、大金持ちになった人というのをほとんど聞かないので、少なくとも、市場や国民の動向を的確に掴むことが苦手かもしれないので、傾倒しすぎてはいけないと感じないでしょうか?
現在、聞こえてくる経済理論や考え方の対局としては、2種類あります。
1) ロン・ポール元大統領候補などのオーストリア学派の市場主義経済。中央銀行不要としており、介入すべきでないとの考え方。小さい政府志向で政府の関与は少なくして基本的に増税はすべて反対
2) Modern Monetary Theory(MMT)信奉者 政府の資産と負債はバランスさせる必要はなく、どんどん債務を気にせず借金をする考え方もある。ただし、インフレは警戒。
今後の安倍政権以降の政府は、先程の述べた失敗経験より、経済学者の意見を主体に政策運営するのではなく、やり方を変えて、世界の実業会や市場で利益を莫大に上げることができる有能な人を中心に政策を考えようにゲーム・チェンジしてはどうでしょうか?
その上で経済学者には、チェック役になってもらいます。
ハイパーインフレの歴史は
ハイパーインフレは、日本以外の他国では時々起こっています。
ジンバブエのように混乱で供給が極端に不足したり、戦後のように供給力が破壊されたらなるので、日本はそのような状況ではないという意見もあります。
少し歴史を紐解きますと、違う事実があります。
はるか昔、1860代には、約8%の貨幣供給量の増加を続けた結果、約20~50%のインフレも3年程度で起こっており、3年で100%のインフレなのでハイパーインフレになっています。(3年100%インフレがハイパーインフレ)
この時、特に供給は絶たれてはおりませんが、社会の混乱はあったと聞きます。
以上、まとめると、歴史的に学ぶことは以下です。
- 通貨の信用をなくさない
- ハイパーインフレを警戒すること
- 財政規律の考慮も必要
現在確定的に言えること
今後の財政規律の必要度や政策を考える上で、短期的にでも財政出動をするのか、金融緩和を続けるのかはいろいろと意見があると思われますので、まず現在、確定的になっていることを示します。
半永久的低金利
日本政府の債務残高は、平成28年度の連結財務諸表でみると約1500兆円です。債務超過額は、約500兆円。
現在は、低金利のため、支払い利息も約7.5兆円と少ないです。ただ、もし金利が3%程度の中程度の金利になったら、どうなるでしょうか?
現在の金利が約0.1%ですので、30倍です。すると試算では利払いは、2028年頃に急激に309兆円程度になり、税収はおろか、金利払いだけで火の車です。(以下の記事参考)
よって莫大な債務の金利払いを防ぐ関係上、日本は低金利を永遠に続けなればいけなくなってしまいました。
金利が5%程度あれば、預金の多い人にはとても安心できますが、金利という国民の収入源が永遠に政策により取り上げられた状態になっています。
また、円高にしたい場合やインフレを抑制したい時、金利を下げる手段がありますが、日本は、この手段を失ってしまっています。世界と相対的に見ると、重要な機能が永遠にひとつ失ってしまっている弱い状態です。
永遠の状態を回避するためには、債務の残高を長期的にバランスがとれた状態にする必要があります。ただ、非常に長い年月がかかると想定できるため、半永久的に低金利です。
高齢化
これはもう疑いようがありませんが、高齢化のトレンドは、今から50-60年前にはわかっていました。具体的な対策を練ることなく、また平均寿命が伸びたことにより人口減少もなかなかこなかったので、すぐには改善できない状態となりました。
高齢化が意味することは、労働力の減少です。労働力の減少が意味するところは、供給力の減少であり、インフレ要因です。
現在、なかなかインフレにならないので、今後インフレになるのも想像しにくいと思います。また退職する人もなるべく長く働くような政策を打っているので、労働力の減少はなかなか考えにくいと思いますが予測してみます。
なお、参考までにここ50年間の雇用者数は、一時的な踊り場はあるにせよ、ずっと増加のトレンドです。
財政規律がない場合で低金利をやめるとどうなるか
今の財政の状態は、政府の連結財務諸表でみると、収入約150兆円、支出は約270兆円です(借金返済含む)。差額約120兆円が毎年赤字です。
財政をバランスさせることがなく、今まで同様に、財政規律をとらないで、低金利を辞めるとどうなるでしょうか? シナリオを以下のように考えてみました。
- 債務は累積されていくので、金利払いのみで、ある時点で、税収以上になっていく。
- それでも政府が借金を増やすと、金利払だけのために、税金を収めるのがばからしくなる。国民もさすがにおかしいと、皆考えるようになる。
- 支出の削減(議員、公務員などの経費削減など)、支出の抑制をしないと、さらに雪だるま式に大きくなる。
- 結局、支出の抑制となり、国民負担も増え、可処分所得減少していき、そういう状態に国民は、選挙で政治にNoを突きつける。
- 低金利に戻り、財政再建を目指す。
- 財政に頼らない収入の強化を政策的には目指す。
- 収入が強化されていくなかで、財政が段階的に改善される。
- 長い年月を経て、低金利の状態がすこしずつ改善される。
財政規律がない場合で低金利を継続するとどうなるか
それでは、半永久的な低金利を継続するとどうなるでしょうか? 財政規律がない状態の場合です。
- しばらくは大丈夫。
- 高齢化による労働力供給減少でインフレに転換する。
- 世界各国は金利があり経済成長続き、インフレが続いている。世界のインフレ化と所得向上で物価があがり、日本は輸入価格がどんどんと上昇してインフレに転換する。
- それでも低金利継続で、インフレ傾向がさらに強まる。
- インフレ進行で可処分所得減少続ける。
- 可処分所得減少傾向が続き、国民の不満が高まり選挙で、金融緩和や財政出動政策が否定される。
- 金利の正常化と、財政に頼らない収入の強化の政策が選択される。
- 収入が強化されていくなかで、財政が段階的に改善される。
- 長い年月を経て、低金利の状態がすこしずつ改善される。
以上のシナリオのポイントとしては、
1) 可処分所得が減り続ける
2) 国民がその原因として、金融緩和や財政出動の政策の実効性に疑問を持ち、その政策にNoを選挙で示す。
3) 政府の財政出動によらない経済の成長や財政の規律が選択される
です。
そのトリガーがインフレです。長い年月がかかるかもしれませんし、市場で異常が起こるとハイパーインフレなどになる可能性も歴史は述べていますので、要注意です。
ひとつ重要なことは、マーケットの反応は早く、暴落などがあれば、一気に一ヶ月などで状況が変わるということです。ところが選挙をするには、年月がかかるので、政策の修正はなかなかできないということです。
よって、マーケットの異常を修正できるような政策変更がすぐにできない場合は、さらに暴落が続くことになりますので最大限の警戒が必要です。
今後の予想外のインフレ傾向
現状では、雇用者数はここ50年、一時の踊り場を除いて上昇し続けていますので、雇用者数が減るというのはなかなか想像しずらいと思います。
特に、退職年齢の引き上げなど、労働を政府が推奨している流れもあるので想像しにくいでしょう。
でも忘れてはいけないのは人口が減少トレンドにはいっていることです。
たとえば、人口が半分に減るのに雇用者の数は増え続ける、というのは考えにくいですね。
現に、ネット販売がアマゾンやメルカリなど多くなり、配達の要員は足りなくなり、また値段も上がっています。バイクや自動車での配達は、高齢者は、目が悪くなっていたり、運動能力が下がるので、できにくい仕事です。
では、雇用者がトレンドとして減る予測データを示します。
出典: 日本の将来推計人口(平成29年推計) | 国立社会保障・人口問題研究所より編集
生産年齢人口は、労働が想定される15歳から64歳までの年齢層です。
このグラフでわかることは、総人口Tを生産年齢人口Wで割った、T/Wの線を見ると、その値が大きくなっていくことです。
つまり、総人口分の需要があると考えると、労働力の供給より需要が大きくなることを表しております。
よって労働力の需給面で見ればインフレ傾向になります。
なお、今政府は、年金支給の問題により、より長く働くことを推奨しています。
これにより、労働者の供給は増えることが想定できます。ただ、注意しなければいけないのは、年齢が50以上と高くなると、目が悪くなったり、運動機能が衰えてくるのでどんな仕事にもつける訳ではない、という状況です。
たとえば、配達やコンビニ店員などはきびしそうです。現状需要があるのは、交通整理やビルの管理人などです。それ以外はノウハウを有する知的作業です。
また、65歳以上が年金等の問題でまた皆働き出す、と思わないほうが良いです。日本は、金融資産1億円以上の富裕層が世界で2番目に多い国です。一家3人の家庭だとすると、15家庭に1つ位の割合です。
この人たちがすべて経営者で沢山儲けたとは、信じにくく、資産運用で資産を築いたと想定しています。そういう人は、趣味で労働するのは除き、働きはじめることもないと思います。
ここで、シミュレーションとして、74歳まで皆が労働するとの条件で、グラフを示します。2020年から急に65-74歳もすべて労働するとの前提ですが、それでもT/W'の値は一貫して上昇しています。
両方のグラフを見ると、特に2040年からぐっと大きくなっています。
増加率でみると、(1.85546-1.644561) / 1.644561 = 21%です。
これから20年で21%だとすると、1年で1%。大した値ではないかもしれません。ただ、着実に労賃は上がっていく傾向になるかもしれません。
ただ、需給が大きく差が出る業務のエリアがあれば、そこの部分の価格は大きく上がっていく可能性もあります。
また、国内の労働事情とは別に、現在、日本はグローバル経済の恩恵を受け、国外から安い製品を輸入できています。
ただ、他の国や新興国が経済成長をして、物価が二倍になったらどうでしょうか? 為替レートがかわらないとしたら、輸入品の値段も上がっていく可能性があります。
また、他の国は、金利があり日本は低金利のままなら、お金の流れも長期的には国内から国外ですので、円安トレンドになった場合、さらに輸入価格は上昇します。
要は、今までデフレだったので、今後もずっとデフレが続くと想定はできない、ということです。
少しずつのインフレなら良いですが、都合よくそうならず、特定の商品の物価が急激にあがることもあるかもしれません。特に人口が爆発している地球で、食料の輸出に関しては、値段がかなりあがるかもしれません。
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市場の反応シナリオ
ご説明したとおりのインフレ傾向が強まり実現するのには長い年月がかかると思います。その頃には、当然、今の政権も変更になっており、日銀の体制も一新されています。
注目する点は、
- 雇用者数の減少
- 為替レート
- CPI
です。雇用者数は、先程のグラフとは違い、現状では増大しております。これは定年の延長や、年金の支給開始を遅らせる制度、また、高齢者の労働を促す制度や事情によるものと考えます。
ただ、これもどこかで落ち始めるはずです。そうした時に、CPIがどうなるか注目する必要があります。
また、為替も要注目で、投機的な動きや、投資資金の動きとは別に、貿易面で現地生産が進み、世界の物価があがることにより、為替が円安方向にシフトして定着してきたら物価があがるでしょう。
この時、重要な点ですが、低金利が半永久的に続き低成長の日本と、金利があり、成長力が高い米国含む世界を比較して、相対的に、海外で資産を運用した方が良い、とのお金の流れも加速すると考えてます。
特に、年金受給の問題などを考えると、海外の直接の証券投資(キャピタルフライト)の額は増え続けている傾向があります。これは、財政規律がないことによる債務が今後も莫大に増加するために、国民は将来を予見し、強化するトレンドになる可能性があります。
そして、日本企業への株式投資からはお金が逃げていくので、日経平均は低迷していくことになります。ネガティブなニュースが多くなると日本の低迷を世界が見越して暴落する可能性もあります。
CPIも日銀が目標にする、生鮮食料品をのぞしたコアCPIでなく、含んだCPIを見たほうが良いです。可処分所得を考える時には、生鮮食料品の価格が影響するためです。
買い物を毎日していればわかりますが、生鮮食料品の価格が増大している傾向です。ステーキ肉の値段であったり、ポン酢の容器が小さくなったり。「高くなったな」と思うことがここ数年多くなっています。
そしてコアCPIが前年比2%を超えてきた時には、金融緩和も辞める計画のはずですが、国債暴落につながるため、日銀は、バランスシートを縮小するのは困難でしょう。
また、今後の高齢化を考えると、年金はとっくに持続不可能となっており、健康保険含めて、社会保険料は値上がりせざるをえません。
よって、可処分所得は今までも増えてませんが、今後も下がってくる可能性があります。実際さがり、今後も定常的に増える期待もできないので、消費が高まることもなさそうです。
雇用者数の減少->世界の物価の高騰->日本の物価の高騰->円安->財政規律はない->年金不安増大・日本の停滞感->可処分所得の減少->キャピタルフライト->日経平均暴落->円安->さらなる物価の高騰
という流れで、物価があがるトレンド、円安になるトレンドが生じてくる可能性があります。
ここで注意しなければいけないのは、ハイパーインフレです。先に歴史を説明したように、財政規律が緩んだり、通貨の信用がなくなったりする場合に起こっています。
今後、海外への送金、投資などが技術の発達により、スマホでワンタッチでできるようになると、過度な円安傾向や、政府財政・日銀への不安が過度に高まるようなことがあった場合、一気に海外の投資商品などにお金が流れていくことがあるかもしれません。
低金利で低収益の日本より、為替リスクをとっても海外の方が利益を出せる、まして円安トレンドならその分も稼げる、と考える人がブーム的に大きくなる可能性があるからです。そこに、政府・日銀への不安が増大することがあると、さらにそれは強化されます。
過度の円安により、ハイパーインフレの定義である3年で物価が累積100%を超える可能性は、リスクとして認識しておくべきです。
現状、海外の直接証券投資の額が増えているので、すでにそのトレンドは始まっていると見ています。
選挙の選択シナリオ
国民にとって直接打撃であるのは、
- 可処分所得の減少
- 物価の高騰
消費税の問題などに焦点がいきすぎているので、社会保険料の値上げなどは議論になることがほとんどないです。これは不思議なことです。消費税は、高齢化により社会保険が維持できない、と始まったはずです。
可処分所得が減少することが労働者にとっては一番困ることであり、増える見込みがないことも将来を暗くします。そのトレンドが明らかになった時に、国民は気づき、現在までの金融緩和や借金による将来からのお金で今の可処分所得を支えることが間違っていた、と思う可能性があります。
つまり財政規律がないことが、国民が将来可処分所得が減少する期待を形成します。
さらに、日本の株価の低迷で、逆資産効果が働くことにより、使えるお金も減少していき、国民の不満は高まります。
そして、今後、仕事を辞めたリタイアした世代は、インフレでない世の中の方が可処分所得が増えるので好ましいと考えます。
先程の市場の反応シナリオで述べたように、円安が進み、物価が高騰すると、現役世代もシニアの世代も、ずっとデフレで悩んできたはずなのに、インフレは好ましくないと考え方を変える可能性があります。
そして、良いインフレは、経済が成長しながら可処分所得が増えることですが、悪いインフレは、経済も成長しないし、可処分所得も増えないことだと認識します。
可処分所得の減少や、物価の高騰のレベルが国民の許容範囲を超えた時、そしてそれが長期的な社会の停滞と今後の不安を増大すると認識した時に、そこに新たな政策を掲げる政党が、選挙で政権を取る可能性があります。
その政党は、経済に熟知した政権でなければいけません。
また、財政規律がないため、競争も十分でなく、金利も高くできなかったため、新しい政権は、財政規律を重視した政党になると予想します。
まとめると、財政規律がないことが、「国民の将来に期待を持てない共通原因」になりえるということです。
1) 積み重なる膨大な債務による年金などの将来不安
2) 財政出動を続けることによるカンフル剤では、企業や経済の自律的競争力、個人の競争力や活力が生まれなかった低収益体質による将来不安
政策提言
低金利が長期化する弊害としては、企業や働く人の利益志向が相対的に高金利の世界の会社と比べると損なわれ、国際競争力も落ちることです。
日本の企業は、利益率、それから自己資本比率をとってみても相対的には世界の優良企業より低いことが多いです。
企業が利益の源泉ですし、グローバルな経済に置いても、戦後に置いても日本の製品が世界を席巻して日本は、「Japan as No 1」と言われるようになったはずです。
金融緩和や財政出動に頼らないような実力をさらに、世界の企業と切磋琢磨して磨いていく企業が増える必要があります。
具体的な政策提言としては、
世界と同様に成長するために外貨を稼ぐ政策に重点を変更
- 企業の国際間競争力強化
- 外国人の訪日
- 日本人金融資産の海外投資
です。
1については、国内だけに留まらないように、小学校の教育レベルから変更していくことです。ビジネス英語主体の授業、海外への留学生制度の拡大(日本の大学の縮小)から始まり、ビジネスに関わる内容を大学受験にも入れ込むこと、そのためには高校から仕事をすることをカリキュラムに入れること、などです。
また、社会人になったあとの、大学院への進学を推奨するシステムを入れることです。学び直してそして、新しいビジネスでチャレンジを何度もできるようにすることです。
その弊害となっているのが、転職時の給料があがりにくいことと、退職金制度・年功序列制度です。退職金制度はなくなるように税制を変更して対応します。
今までと違う発想で行うべきです。
2の外国人の訪日については、現状、東京以外にも京都、金沢など外国人客が増える良いトレンドが出てきています。京都に行ってわかったことは、交通標識、電車、バスなど必ず英語で、しかもわかりやすく書かれています。
日本は、恐らく世界でもっとも交通機関が田舎まで発達している国だと在日の外国人に指摘されました。電車、タクシー、バスなどでどんなところでも大体問題なくいけるとのことです。これは日本の資産です。
日本全国を旅行対象にするために、ふるさと納税に英語看板化の特典をつける制度をつけて普及を図ります。そして、小学校からの英語は、外国人観光客を助けることができるレベルの会話を教え込ませます。
それとともにレストラン、商店街などに、英会話教育を受ける予算をつけますが、お店の方は忙しいので、先生が、店まで出向いて時々、会話の練習をする制度にします。
3はかなり影響力がありそうです。貿易や、国内経済だけで稼ごうとするのでなく、莫大な国民の金融資産が現在、低金利の銀行預金中心に置かれており、有効活用されてません。
この莫大なお金を世界の経済成長する国に、出稼ぎにいってもらい、海外で稼いで、国内に還流させるのです。
約1800兆円の国民の金融資産のうち、約1000兆円程度が、銀行預金です。このうち、500兆円を海外に出稼ぎにいってもらい、利回り10%を目指します。
そうすると、毎年50兆円が収入として入ってきます。これを国内に全部還流させなく、海外で複利効果で増やすと、相対的に莫大に大きな資産になります。ここが一番稼げる箇所だと思います。
バフェットが推奨しているとおり、S&P500に毎年投資したとしても50年程度平均利回りは毎年10%程度あります。
税制もそれを後押しして、税金は、10%程度にします。そうすると、相対的には日本株よりは長期的に利益をあげられるはずなので、税収にもなると考えます。
ただ、これも指数であるS&P500のみへの投資でなく、投資教育を小学校から必須の知識・技術として教えるべきです。それは、バフェットがいっているように、小さいアルバイトのような商売から始まるのが適切です。
中学、高校、大学における投資教育のカリキュラムを金融専門家や経済評論家、証券会社のサラリーマンなどか作ってはいけなく、世界で莫大に利益を上げている人を高給でお願いして、世界一の教材と授業を作ることが重要です。
大きく稼げてない人が教えてはいけません。暴落した時の対処を教えるのも必須です。投資は、株式、為替、先物、オプション、債券、不動産、商品と幅広く、相互関係を含めて教える必要があります。
まとめ
財政規律がないことは、低金利と相まって、日本停滞の共通的・根本的原因になっています。
その規律は、平時の状態では変わりにくく、為替や株式等のマーケットでの売買の動向で、まず大きなトレンドが生まれ、その結果、被害を被る国民からの要求で政権が変わることを示しました。
きっかけはインフレです。ただし、インフレがもし来なかったら、より長い年月をかけたスペインやポルトガルなどの衰退を危惧します。
奇策に頼らず、実現可能なことを選択して日本社会が良くなることを望みます。
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