ソフトバンクの決算が絶好調で、営業利益は何と1兆円超えです。
トヨタ自動車が営業利益1兆円超えの企業としては、定位置にいましたが、ソフトバンクも超えるとはすごいの一言です。
多額の税金も納めることになるので、国民にとっては有難い企業です。
ソフトバンクの孫さんは、過去には、「デジタル情報革命を起こす」と言っていましたが、実際は携帯電話の会社を買ったり、ネット系企業を早期に発掘して買ったりと、「投資家と携帯電話の会社の人」という奇妙な人、との印象を持ってました。
デジタル情報革命については、革命というよりは、ネットの優良アプリが増え、アップルによるスマホの出現により、ネットサービスがより浸透していった、との認識です。
今となっては革命とはいえなかったんではないかと思います。
最近の話題は、イギリスのアームという会社を買収したことです。半導体事業になぜ手をだしたのかという疑問があります。
ここでは、決算の内容と、今取り組んでいること、今後の見込みがどうなのか批判も含めて検討してみました。
決算の内容
ソフトバンクの孫さんのイメージはどちらかといえば投資家のイメージです。
経営の天才、交渉の達人と呼ばれています。
TVで発言内容を見てもエネルギッシュで元気をもらいます。
そのソフトバンクの決算を米国の偉大な投資家ウォーレンバフェットのバークシャー・ハサウェイと比較してみます。
孫さんの投資家としての腕はどうか....
バークシャー・ハサウェイも最近ちょうど有名な年に一度の株主向け年次会議を実施し、決算も発表しています。(2017年5月時点) 2016年の決算内容を比較のために持ってきます。
表 決算の内容
ソフトバンク | バークシャー・ハサウェイ | |
売上高 | 8兆9010億円 | 25兆5356億円 |
営業利益 | 1兆260億円 | 3兆7394億円 |
売上高営業利益率 | 11.5% | 14.6% |
純利益 | 1兆4744億円 | 2兆7493億 |
注)バークシャーハサウェイの額は1$=114.20で換算。
この値の中で企業の成績を示す重要指標は、売上高営業利益率です。
経産省の資料によると日本の企業の平均は4.0%程度なので、ソフトバンクの11.5%は、日本企業としてはかなり良い値です。
しかし、やはりフォーレンバフェット率いるバークシャーハサウェイの14.6%には勝てませんでしたね。
では、今までの決算の内容はどうでしょうか。
売上高も右肩上がりで1株益もほぼ右肩あがりなのでとても成績は良いと思います。
ただし、実際の決算では、2016年は2015年に対して0.2%の増減のみですので、ここは赤信号ですね。
でも個人的には投資するとしたら長年成績の良いバークシャーハサウェイになります。
今取り組んでいること
ソフトバンクが主に今取り組んでいることをリストにしてみます。
- 国内通信事業
- スプリント事業
- ヤフー事業
- アーム事業
- 流通事業
- アリババ等投資
スプリントは単なる投資ではなく、経営の中まで事業として取り組んでいるようですね。スプリントが利益を出せるようになったのも孫さんの関与が大きかったからとされています。
ここは国内の携帯事業の経験が生きたのだと思います。
この中でアームというイギリスの半導体事業に投資というのが二つの点で意外でした。
- イギリスに半導体会社がそもそもあったのか?
- 半導体会社に投資するのは事業領域を超えているのではないか?
アームの半導体チップ出荷数は指数関数的に伸びているようです。
アームの主な製品は、スマホ用のCPU(Central Processing Unit)で、それ以外にもニンテンドーDSや、PSP Vitaにも使われていて携帯型デジタル機器でのシェアは圧倒的とのことです。
アームは、特定のCPUを差すのではなく、アーキテクチャの名前で、メーカがライセンスを受けて製造しているとのことです。
インテル社のパソコン用ではなく、小型機器用の組み込みマイコン用設計開発会社でライセンスで商売しているイメージです。
組み込み用のマイコンは昔は日本産含めていくつかあったと思いますが、アームが発展したのは、PDAや携帯で採用され使われるようになったからです。
そこまで採用されるのは使い勝手がやはり良かったからでしょう。
イメージとしては、次世代版インテルに投資し、その中身はマイクロソフトOSのような汎用性があった、との認識です。
やはり標準を制してデファクトスタンダードを取った企業は強いですね。
少し経営数値を見てみましょう。
アームの売上高営業利益率は50%程度とのことです。
マイクロソフトは過去に60%、インテルでも20~30%でしたので、非常に良い数値です。
では、そのアーム事業は単なる投資先として選んだのみか、何かのシナジーを考えているのか?
今回の決算説明会のプレゼンテーション資料では、何かのシナジーがあるのではなく、投資先としてアームを選んだようです。
今後の見込み
ソフトバンクの今後の見込みはどうか考えてみました。
今までの孫さんのエネルギッシュな活動を見ると、今後も売り上げ、利益とも伸びて行く会社になると思います。
本人は、60歳で社長をやめるのを撤回し、60代までは社長を継続するようですが、辞めることはなく、生きている限り、恐らく80代まで経営の舵を切ると思います。
ウォーレンバフェットだって86歳で元気に活躍していますので。
しかし途中で見込みが外れてコケることもあると思います。
気になっているのは、Softbank Vision Fund (SVF)です。
これは、10兆円もの資金を集める投資ファンドです。
ここからは私の経験と視点も入り批判的になっていきます.....
決算説明会の資料では、人工知能が特異点(シンギュラリティ)にまで変貌し、あらゆる産業が再定義され、情報革命を加速させるとあります。
まず、この説明は前にも聞いたような話しです。昔言っていたデジタル情報革命と同じように聞こえます。
人工知能の特異点とは、コンピュータの知能が人間を超えることを意味し、2045年と想定されてます。
こんなことは起こらないと考えてます。人工知能の技術やサービスは広がって行くと思いますが、段階的に浸透するもので、人間を超えることはないです。変貌することもないと思います。
特に5感を使った実体験に基づく創造的な発想・仕事や、複雑な情報から専門的に大局をつかみ提案・折衝すること、対人間的な満足度を色々な状況下でも発揮するサービス等は置き変わることがないと思います。
産業が再定義される、というのもないと思います。技術を取り込んで段階的に発展するだけだと思います。
そして情報革命を加速させる。とありますが、別に革命ではなく研究開発された技術が市場の製品・サービスに変化していく、今までと同じ流れだと思います。
このSVFは人のお金でも投資しており、自分だけが損するわけでなく、また出資金分の投資先も多量に探す必要があるため、投資先の発掘がおろそかになりうまくいかないのではと考えてます。
なぜそう言えるかですが、過去のこんな経験がありました。
- 2000年のITバブル崩壊後、しばらくしてからブロードバンドの時代が来るとの触れ込みでソフトバンク関連会社がファンドを作った。
- その申し込書類を見ると過去の実績が記入されており、数10%から数倍のリターンが個別対象企業について紹介されていた。
- 当時のブロードバンドの流行りとその実績により、値上がる確率は100%と考えて投資した。
- 投資期間は確か5年。結果は、損! 確か30-40%の損失。
- 個別の投資先企業はなかなか見つからなかった模様。投資先企業を見てもそれほど魅力なし。資金を集めたので運用せざるを得なくしかたなく投資している感じ。
- 流行りのもので換金性のないものには手を出さないと決める。
- 絶対儲かりそうなものは必ず疑うこととなる。
別にSVF個人投資家向けに売り出している訳ではありませんが、上記の5と6がSVFには該当します。
よって、残念ながらソフトバンクの今後の見込みは明るいと言いきれません。
個別の投資先がどうか、革命を起こせそうなものか、注視する必要があります。