北朝鮮が2017年5月14日に、新型と思われるミサイルを発射しました。
2017年のミサイル発射の履歴を振り返り、今回のミサイルの性能、その発射の意図を探ってみます。
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2017年ミサイル発射の履歴
色々なミサイルが発射されるので、最近の発射について整理します。
年月日 | ミサイル名 | 成功 | 備考 |
2017年2月12日 | 北極星2号 | 成功 | SLBM改良型 固体燃料エンジン 高度約550キロ、約500キロ飛行 日本海に落下 |
2017年3月6日 | スカッドER改良型(4発同時発射) | 成功 | 射程1000キロ、日本海に落下 |
2017年3月22日 | ムスダンか | 失敗 | 発射直後 空中爆発 |
2017年4月5日 | 北極星2号 | 失敗 | 飛行距離約60キロ、最高高度189キロか |
2017年4月29日 | 不明 | 失敗 | 約50キロ飛翔 北朝鮮ないリブに落下か |
2017年5月14日 | 火星12 | 成功 | 飛行距離787キロ、高度2111.5キロ |
今年に入ってから4月までのものは、いずれも射程1000キロ程度のもので、また直近で3月から4月までのものは、3回失敗していました。
今回のミサイルの性能
今回のミサイルは、高度2111.5キロという大気圏外の高い箇所まで届かせたことがポイントです。
国際宇宙ステーションの高度が約400キロ位で、そこでは真空状態なので宇宙服を着て船外活動する様子を見られたことがあると思います。
この2111.5キロはその4倍の高度、真空度はさらに高まります。
今回、ロフティッド軌道で発射されました。
弾道ミサイルの軌道は、3種類あります。(以下図参照)
ロフトッド(Lofted)は、高くあげるという意味です。
ディプレスト(Depressed)は、平たいとか下落したという意味です。
各々の軌道の特徴は以下です。
軌道名 | 特徴 |
ロフテッド | 射程は短くなるが高度が高くできる。 |
最小エネルギー | 一番射程を遠くできる。 |
ディプレスト | 射程は短くなるが早く低いバスを通せる。発射から着弾まで短くできる。 |
また迎撃ミサイルの性能は以下です。
ミサイル名 | 射程 | 最大高度 |
SM3 ブロック1A | 700km | 70-500km |
SM3 ブロック2A(開発中) | 約200km | 約1000km |
THAAD | 200km以上 | 40-150km |
パトリオット | 20km | 15km |
出典: 米国Wikipedia、ウィキペディア他
この数値も日本のWikiにはすべて載ってなかったので、米国のWikiからも持ってきました。
THAADは日本には配備されておりません。以下、ご参照方。
ここで見て頂きたいのは最大高度です。
SM3(Standard missile 3)が一番高く、最大でも500kmです。
SM3 ブロック1Aは日本に配備されているもので、射程3000km内の短距離弾道ミサイル及び準中距離弾道ミサイルまで迎撃可能となってます。
しかし、今回のミサイルは、ロフテッド軌道で、SM3ブロック1Aの最高高度の4倍もの高さまで打ち上げられてきてます。
つまり真空状態の約2000kmから弾丸のように1500km落ちてきて、そこで初めて迎撃範囲に入ります。
この時の迎撃確率がどの程度か、あるいは迎撃できるか否か性能の範囲内なのかはわかりませんが、相手が相対的に非常に速いので、SM3が遅く軌道変更・修正しても追い付かず、迎撃するのは困難と思います。
また、開発中のSM3 ブロック2Aでは最大高度約1000kmにはなりますが、それでも半分の高度です。
このブロック2Aのデリバリーは2018年予定ですのでもう少し先です。
その発射の意図
わざわざ約2000kmものロフテッド軌道で発射した意図は、「今の迎撃ミサイルでは、対応できないだろう」と、北朝鮮が意思表示したかったのではないでしょうか。
そうすることによって、THAADやイージス艦を連れてきても、北朝鮮は圧力を受けないことを示し、今後の交渉を有利にしようと考えているのではないでしょうか。
中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」を巡る初の国際会議開催中に実施したので、中国はかなり怒っていると思います。
よって国際社会の声を受け、中国はさらに北朝鮮に圧力をかけやすくなるので、本来は北朝鮮に不利なはずです。
しかし、有利・不利に関わらず、開発を段階的に、国際社会の反応をみつつ、どんどんと進めて行き、最終的にICBMや核兵器の開発が終わったあとに交渉のテーブルに着くのかもしれません。
それまでは国際社会からの兵糧攻めにあうと困るので、ロシアと調整し、自国の兵糧がどの程度持つかはしっかり把握した上で計画を進めているはずです。
ただし、念のため、裏ルートでは、米国と調整できる余地は残していると思います。
今回の発射について軍事的な圧力をさらにかけられることはしてないので、北朝鮮は、ミサイル発射をまた続けると思います。
やはりロシアの対応が鍵になると思います。
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