ソニーとパナソニックが介護事業に本腰を入れているらしいです。
電機業界とは違う業界なので、この話を聞いた時は、本業と無関係と思われる業界への進出であり、違和感がありました。
父の介護で隔週で遠方まで帰省して、介護のサービスについてはかなり勉強し、また日本の介護のサービスと保険制度はとても安心できる良いものだと認識していました。
自分の親族や将来の自分自身を想定し、介護業界に対する新規参入の経緯と、電機メーカが取り組む理由、その特徴と期待について検討してみました。
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介護業界に対する新規参入の経緯
コムスン
まず思い出すのが消滅したグッドウィルグループとその参加の事業者であったコムスンです。
1988年から営業を開始し、新しいサービスを打ち出して注目を浴びていた会社でしたが、介護報酬不正請求事件を受け、2007年には事業が行き詰ってます。
当時、あれだけ持てはやされており、注目を浴びたグッドウィルグループの折口氏は経団連のメンバーにもなりましたが、失脚していきました。
不正請求の背景には、新興企業グループであるがゆえ、畑違いで利益に走る体質と、現在でいうコンプライアンス意識の低さが問題であったと思います。
ただ、コンプライアンス意識の低さというのは外部の人が言うには簡単ですが、実際のところ、業界全体で人手不足が続いており、そもそもコンプライアンスを守れる業界ではないのかもしれません。
人の命を預かっているのに、労働者の待遇が悪い、そうすると人も集まりません。
ハローワークに行くと介護関係の仕事は常に募集がありニーズは多いですが、説明会を開いても集まる人も少ない....
介護事業そのものがブラック化し労働環境が適切でないのでは?
これは、医療や看護婦の仕事についても言えるかもしれませんが....
ワタミグループ
ワタミグループも介護やお弁当事業に乗り出し、新鮮な野菜で作った高齢者に良いお弁当というのはとっても魅力的でした。
わたみ社訓で有名になったのは、「365日24時間死ぬまで働け!」。
これは電通の社訓よりも悪いですね。
自分が社長としてその気持ちで取り組んで来たことは理解できるとは言え、この文言は、「法律違反を犯す、コンプライアンスや従業員満足度は無視する」と宣言しているようなものです。
トップがその意識なら、コムスンと同様な問題があったのではないかと思います。
調べてみると、驚いたことに口コミ情報は思ったより、そんなに悪くないという印象です。
本体の居酒屋が不振のため、事業を譲渡したとのことです。
但し、本体の居酒屋がブラック企業化していたので、介護事業の入居者も減っていったとのことです。
従業員を大切にしない -> 顧客のサービスが低下する
ということを入居予定者は感じたんだと思います。
ひとことで言えば「安心できない」ということだと思います。
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電機メーカが取り組む理由
新興企業が介護に取り組んでうまくいかなった理由と介護事業そのものの問題は以下にまとめました。
- 畑違いで利益に走りすぎる体質
- 実質的なコンプライアンス体制の欠如
- 介護事業そのものがブラック化し労働環境が適切でない
電機メーカが取り組むには「畑違い」という点は当たっていて疑問ですが、「利益に走りすぎる体質」、「コンプライアンスの欠如」というのは該当しにくいと思ってます。
本体の事業を正しくしているという前提ですが、そういうものが当てはまりにくい体質になっていると思います。
3の労働環境については、まさに畑違いなのでどう取り組むかが課題でしょう。
では、ソニーやパナソニックなどの電機メーカがなぜ取り組むのか、その主な理由は、巨大な成長するマーケットである、ということが第一だと思います。
それから新興企業の介護事業がうまくいかなかったので、本体の信用がある会社では、会社の「ブランド」を有効に活用できるからです。
バナ系やソニー系だったら大丈夫でないか、との意識も働くと思います。不祥事が出ない限り。
その特徴と期待
自分の親族に利用させる場合、あるいは遠い?将来、自分が期待することは何かというと、
- 在宅介護でのサービスが充実している。
- どうしても在宅が不可能になった時の入居費用が多少割高でも抑えられている。(入居費用1000万程度以下)
このあたりは人それぞれだと思います。
入居費用が数千万というのは、かなりのお金持ちなら可能だと思いますが、高すぎて生活設計できない人がほとんどだと思います。
在宅介護をずっと父には要介護3からその下までやってもらってますが、とても良いサービスです。
また、在宅介護が不可能になった祖母は特養という公的な老人ホームに入り、自分も見に行きましたが、人手不足で大変だという感じてなく、優しい人が適切なサービスを提供している感じでした。
この特養に入れれば手ごろな値段で問題がないのですが、かなり入居倍率が高く、何年も待たなければいけないようです。
その傾向は今後、高齢化が進むにつれて強くなると思います。
ここが一番不安なところなので、その代わりとなる手頃な価格(1000万以下入居費用)の設備ができることを期待したいところです。
では、ソニーやパナソニックがどう取り組んでいるのか特徴を調べてみました。
ソニーの取り組みの特徴
ソニーの介護事業は、「ソニーライフケア」という会社が担ってます。
在宅介護サービスではなく、老人ホームを運営してます。
その取り組みの特徴は、
- 介護従事者の視点も含む理念
- 質の向上を追求
- ITによる品質管理
です。
従業員に対する理念を持っていることは、ワタミやコムスンのような事例にならないことを期待したいところです。
質の向上の追求というのも頷けますし、IT活用というのも良いと思います。
ただし、イノベーション的なところはあまり見当たらないのが残念です。
過去には新製品を作り出したソニーが驚くようなサービスを編み出して欲しいところです。
費用ですが、例として、ソナーレ祖師ヶ谷大蔵では、入居費用が1690万、月額約26万となっており、入居金なしだと月額約49万です。要介護5までで認知症、医療対応含めて対応となっているのでとても安心できるサービスです。
将来の年金額等考慮すると高いですね.....質の向上を追及しているので仕方がないとは思います。
月額49万で10年生きるとすると、約6000万! このうち、私設のものも含め年金で半分カバーするとしても3000万....やはり高いですね。
1690万払って十年生きるとし、月額年金が私設年金含め20万入るとすると、2410万!
かなり溜め込んでぎりぎりですね。
なかなかお金持ちでないと入れないと思います。
てもお金持ちの高齢者が多いのと、安心できるサービスを提供しているので、ビジネスとしては成り立つ感じですね。
バナソニックの取り組みの特徴
バナソニックは「パナソニック エイジフリー」という会社で介護事業を行ってます。
バナソニックは、住宅に関する家電を扱っており、使いやすい製品やサービスを考えて事業を開始したとのことです。
サービスとしては、以下の3つで多面的に展開してします。
- 生涯の住まい「エイジフリーハウス」
- 在宅介護サービス拠点「エイジフリーケアセンター」
- ケア用品とリフォーム「エイジフリーショップ」
その取り組みの特徴は、
- 品質へのこだわり
- 今後、実用化に向け開発を進めている介護ロボットやICT/IoT、AIを活用した介護サービス
二番目についてはベッドが分離して車いすになるという商品を作っているとのことです。
では料金の確認です。
エイジフリーハウス 相模原相模大野を例にとると、入居金は0です。
毎月の費用は計算項目が沢山ありますが、ざくっといって月20万です。
ただし、24時間対応となってますが、訪問してくることになっているのでスタッフが常駐している訳ではなさそうです。
認知症対応も特に宣伝してません。
値段としては許容可能な額ですが、高齢者になって在宅介護ができなくなる理由が、「認知症」と「医療が必要」ということを考えると、物足りないと思います。
値段相応ということになると思いますが。
それでは、電化製品で何かのブレークスルーはあるか、という点を見ていきます。
「意思伝達装置 レッツ・チャット」という装置があり、言語や上肢障害、視覚障害があっても意思を伝達できる装置です。
これは長年の研究と現場でのフィードバックからできた製品だと思います。
電化製品としては、レッツ・チャットと、ベッドが分離して車いすになるという商品二つが代表的な特徴です。
期待するところとしては、便利だなと思うような製品を手頃な価格で提供することですね。
例えば....認知症になりかけている人に対して、
- 認知症を予防する電気的支援装置
- 認知症を予防するメニューを本人の趣向に合わせて自動立案する装置
などです。開発可能かどうかは分かりませんが。
まとめ
介護業界に対する新規参入の経緯と、電機メーカが取り組む理由、その特徴と期待について検討してみました。
大手企業のブランドと安心感はありますが、物足りなく感じているのは技術を利用したブレークスルーの箇所です。
もともと人手を中心とした業界なので、難しいところはあるかもしれませんが、先進国の中でも一番に急速な高齢化をしている日本の代表メーカとして、介護のエリアにもイノベーションを起こして欲しいと思います。
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