最近また、人工知能ブームです。
またと言ったのは、30年位前にもブームになったからです。
こんな話を最近聞きました。
「人工知能を専攻した学生は高給で引き抜かれる」
「将来、専門性の必要な人間の仕事は人工知能にとって代わるので、人工知能を使ったり、開発する仕事が人間の仕事として残る。将来の就職を考える時に今から考慮が必要。」
また、証券会社のセミナーに参加すると、「人工知能に関する投資信託」がブームで複数の会社が取り扱ってます。
そのセミナーでは、iPhoneの「siri」を使ってデモをしていました。
前回はブームで終わりましたが、「今回は本物なのか?」、人工知能は人間を超えているか確認したくて、人工知能のシステムを使用し試してみました。
30年位前はどうだったの?
当時はバブル真っ盛り。
人工知能、AI(Aritificial Intelligence)が流行り、脳の研究も同時に流行りました。
具体的には人工知能を試用したエキスパートシステムという名のシステムが流行り、各メーカが開発し、企業がルールを覚えさせて、経営支援などに使用していました。
また、派生した学問として、あいまいさを扱ったファジィ理論や、脳の機能を模擬したニューラルネットワークも流行って行きました。
ファジィ理論を使ったエアコンや投資信託も出てきました。
当時ロボットも流行っており、人工知能やロボットが人間の仕事の代わりになり、人間はより高度な仕事をするようになる、といわれてました。
ところが、あまり役に立たないと思われたのか、あるいはルールを覚えこませるのが大変だったのか、エキスパートシステムは段々と使われなく、人工知能のブームも自然にすたれて行きました.....
なんでまたブームが始まったの?
まず驚きのニュースだったのは、IBMのワトソンというシステムです。
IBMのワトソン
これは、質問応答システム・意思決定支援システムであり、米国の人気クイズ番組「ジェパディ!」で人間と対決することとなりました。
本・台本・百科事典(Wikipediaを含む)などの2億ページ分のテキストデータ(70GB程度、約100万冊の書籍に相当)をスキャンして取り込んだ。2011年2月14日からの本対戦では、15日と16日に試合が行われ、初日は引き分け、総合ではワトソンが勝利して賞金100万ドルを獲得した。
計算機の発達により、多量のデータを読み込み、それを知識として整理し、クイズを理解し、知識として引き出してすぐに答える、何ともすごいことなのかと思いました。
ここで一番驚いたのは、自分でそのデータを整理したということです。
Googleのアルファ碁
次の驚きは、Googleのアルファ碁というシステムが、トッププロの棋士に勝ったことです。
その学習方法も、人間の神経を模したニューラルネットワークを作成し、深層学習という学習方法、すなわち多量な試行錯誤により、自ら学習し、強くなっていくシステムだということです。
深層(ディープラーニング)というのはニューラルネットワークが深い層まで処理するということで、これにより複雑な判断が出来るとのことです。
人間がルールを教えるのではなく自分で学習していく......
そのため、なぜその手を打ったのかと聞いてもコンピュータはわからないそうです。
この「人間がルールを教えるのではない」というニュースはかなり私にとっても衝撃的な内容でした。
オセロゲームの例
昔は、ルールをどうコンピュータに教えていたのか、簡単な例として、オセロゲームを例に出しましょう。
人工知能がのブームの前に、オセロゲームの対戦プログラムがはやっており、筆者も昔、夏休み一ヶ月かけて作りました。
その中では、以下のようルールをコンピュータに与えてプログムラムを書いていきます。
- 四隅の端を取れるのなら64点
- それ以外の端なら16点
- あとは相手をひっくり返した枚数の分だけカウント
- すべての碁盤の目について点数を計算し、一番点の高い手を打つ
このルールは一番簡単なものです。
これ以外に「If, then 」分を作って追加のルールを作ります。
例えば、四隅の端のひとつ手前は基本的に打たないとか....
また、一手先を読み、コンピュータがある手を打ったら、人間はどういう手を打つか、その点数はいくつかと計算させることにより、さらに高度化します。
この一手先が、二手先、三手先....となって行き、これらは「N手読み」と言われてました。
当然読めば読むほど計算時間は増えます。
こうして計算機に必要なルールや計算方法を具体的に指示していきます。
30年前に流行ったエキスパートシステムも大なり小なり人間がルールを与えてます。
このルールを与えないで、自分で学習するということが一番の衝撃で、今の人工知能のブームの火付け役だと思います。
人間を超えるか?画像認識をさせる
IBMのワトソンは無料で使える!
IBMのワトソンのシステムは、簡単な範囲なら無料で使えます。
また、プログラムを専門的に組む場合の本格的な使い方でも一ヶ月は無料で使えます。
IBMといえば、かなりお堅いイメージがあったのですが、ワトソンをOpenにし、ユーザ数を増やすのも着実に実施しているようですね。
ビジネスのいろいろなシーンでも使用されるようになっています。
いよいよ画像認識をさせる、しかも少し難しいもの
家庭菜園で果樹栽培を趣味でやっているので、画像は果樹関係のものを利用することとしました。
以下のサイトから試しました。 (途中から英語になります)
学習させる前と学習させてあとで比較してみました。
以降は、学習させる前からです。
まずはレモンから
簡単な画像からスタートです。
おお、なんと、Lemon yellow colorというスコアが0.82で無事、黄色いレモンと識別してくれてます。
このスコアというのは、定義したクラス(ここでは、Lemon yellow color)に合致している度合いで、最高が1.0です。
事前に、Lemon yellow color, lemon, citrus, fuirtという各々のカテゴリ(クラス)で事前学習をしていることになります。
それでは次にレモンの皮を全部剥いたものです。
おお、ここでもLemmon yellow colorが1.0となって出ていて判別されてますね。
この皮を剥いたレモンというのは人間でもあまり見ることはないて思いますが、さすがですね。
どこかで学習していたのでしょう。なかなか賢いです。
(ちなみに、このレモンの皮をなぜ剥いたかですが、イタリア アマルフィの食後酒、リモンチェッロを自家製で作る為に皮をむきました。皮を強めのアルコールに浸して作るのです。よってリモンチェッロを作った事がある人はこれが皮を剥いたレモンだとすぐわかります。)
次に日本ユニークな柿を
まずは実のみの画像です。
おお、これも点数は高くないですか、柿(persimmon)と表示されてますね。点数が高いのを常に上位表示するのではなく、一番これだと思っているものを表示しているようですね。
日本の柿は、中国や、欧州でも高級品として有名ですが、米国生まれのワトソンが知っているとは思いませんでした。
次は鉢になった柿です。
残念ながらこれは柿とは認識されてませんね。
Plant(植物)とは認識されてます。
実の形を見たら柿とわかるはずですが、複数の対象があるとうまくいかないようです。
次にキィウィ
次に我が家で収穫したキィウィです。
残念ながらKiwiiのKiの字も出てきませんでした。
バンのバスケットというのが第一候補になってます。
形をよく見ればパンでなくキウィとわかるはずですが。
白ざくろ....これは無理でしょう
次は白ざくろです。
アメリカのざくろは赤色のみです。
白色のものは中国原産であり、これは泰山三拍という品種です。
これも、実を開いているのであてるのはまず無理かと....
やはり無理でした。ザクロ(Pomegranate)という言葉すらありませんでした。
次はアメリカ原産の幻の果実ポポー
アメリカ原産なので、たぶんわかるはずという思いでポポーを選びました。
ポポーは、プリンとパイナップルを足したような味です。
ドリアンにも少し似ています。
傷みやすいため、市場では手に入らない幻の果実です。
この画像は割って食べている所です。
残念ながら全然識別してくれませんでした。
次の画像は実の画像です。
これも全然だめですね。アメリカ原産なのに.....
いよいよ学習させる! その結果は?
ポポーを認識してくれなかったので、いよいよ学習させてみます。
Watsonの説明ページによると、
- 3つのカテゴリー(Class)の写真を各々50枚以上準備する。
- そのカテゴリーのものと違う写真も50枚以上準備する。
- 学習させる(3~4分)
- 新しい写真で再判定
という流れです。
ポポーと、似たような果物である、フェイジョア、洋梨の3カテゴリー準備し、また関係ない果物の写真も儒見日しました。
大体70枚位ずつ準備しました。
その結果、
うーん、洋梨の方が0.88で選ばれてます。
でもポポーも0.78です。
コメントでは、もっと画像を入れて訓練してくださいとあります。
この写真を見る限り洋梨には見えないはずですが......
評定: 人工知能 人間を超えない
つぎは、
これも洋梨(ラフランス)の方が高い点数です。ポポーもありますが。
ラフランスは、まっとどっしり丸くなっているのでわかるはずですが...
評定: 人工知能 人間を超えない
最後に、簡単なもの
これは、ポボーとのみ判定してくれました。
評定: 人工知能 人間と同じレベル
まとめ
現在の人工知能がどの程度なのか、大体わかりました。
まだまだ人工知能は人間を超えてはいません。
しかし学習をさせるとそれまで分からなかったことも自分で特徴を抽出し覚えることができることはわかりました。
但し、その特徴を人間のようにうまくはまだ捉えられてないようです。
あと思うのは、間違ったものを覚えさせたら、それをどう取り込むのかということです。
無視してくれるのか、それとも悪いものをおぼえて間違った判断をするようになるのか...
人間の場合でいうと「これは間違った知識だから」とあとから言われてもなかなか忘れるのが難しいことがあると思います。
ポジティブに考えると、以下の展開が今後あり得ると思います。
- 人工知能のアルゴリズムを同様に無料で試用させる流れができる。
- 多数のユーザが各々のアイデアで取り組む。
- その中からいいアイデアが出てきて実用化が進むとともに、技術自身も発展していく。
人工知能も段々とは賢くなっていくので今後の動向も注目していきます。